『ブギウギ』第1週から第3週までのあらすじと感想※生彩放つ “おちゃっぴい”

『ブギウギ』第1週から第3週までのあらすじと感想
このページではこんな疑問を解決します!!
  • 朝ドラ『ブギウギ』の第1週から第3週まで(15話分)のあらすじとは?
  • 出演者や作品情報は?
  • ドラマの感想は?
  • 物語の時代背景は?
  • 『ブギウギ』のキャストの魅力は?
目次

「ブギウギ」第1週~第3週のていねいなあらすじ

『ブギウギ』第1週~第3週のあらすじをまとめています。
まだドラマを観ていない方、これから観る方はこれを読むとストーリー展開がわかってしまうのでご注意ください。

『ブギウギ』第1週~第3週のあらすじ

第1週「ワテ、歌うで!」

あらすじ

福来スズ子(趣里)は産まれて間もない愛娘・アイ子にキスをして、観客の待つ舞台に向かう。
満場の拍手が送られるなかで、踊りながら歌うのは、彼女の代表曲『東京ブギウギ』だ。
昭和23(1948)年、まだ占領下の日本人の心に、歌を通して元気と勇気を与えたスター・福来スズ子の半生を描いた物語がいま幕を開ける。

『ブギウギ』の最初の舞台は、1926年、大正最後の年、大阪の下町・福島。
風呂屋「はな湯」を営んでいるのは、道楽好きな主人・梅吉としっかり者の妻・ツヤの夫婦である。
娘は12歳になる鈴子(澤井梨丘)。少女時代のヒロインだ。

彼女は『恋はやさし野辺の花よ』を歌って常連客の気持ちを和ませていた。
鈴子の下には3歳下の弟・六郎(又野暁仁)がいる。
亀に目がないぽんわりとした少年である。

「はな湯」の従業員は煮炊きのゴンベエがいる。
寡黙な男でちょっと訳アリのようだ。

そんな「はな湯」には、医者、八百屋の独身男、あん摩のおばさん、当たらない易者、アホのおっちゃんなど個性豊かな常連客が集って、いつも風呂屋はかまびすしい。

ある日、鈴子の親友、芸者の娘タイ子から、花咲少女歌劇団の存在を知らされる。
小学校卒業を間近にひかえた鈴子は家業の「はな湯」を継ぐつもりの鈴子だが、歌劇団への想いは募っていく。
ツヤと梅吉に相談したところ、ふたりとも花咲の試験に受けるのは大賛成。
勇を鼓して入団試験を受けた鈴子だが、結果は不合格。

だが、紆余曲折を経て、鈴子は「梅丸少女歌劇団」(USK)になんとか入団。
歌劇団の研究生として、大きな一歩を踏み出す。

第2週「笑う門には福来る」

あらすじ

「梅丸少女歌劇団」に入団した鈴子は、同期の白川幸子、桜庭辰美らとともに厳しいレッスンを受ける。
教育係は男役トップスターの橘アオイだ。
ただでさえ、バレエや日舞、ダンスの訓練が厳しいのに、橘によるしごきは研究生にはこたえた。
ひと月後には、鈴子・白川・桜庭の3名だけになり、あとの研究生はやめてしまう。

そんな鈴子にとって憧憬の対象が、娘役トップスターの大和礼子である。
ある日鈴子は、大和から激励されて足首を保護する布をもらう。
鈴子は辛いレッスンを乗り越えようと奮起する。

いっぽう、裕福なお嬢さんの白川と貧しい畳屋の桜庭は反りが合わないため、なにかにつけて衝突しがち。
3人仲良くしようと鈴子は画策するが、「梅丸少女歌劇団」の単独初公演では新人3人のうちデビューできるのが1人だと通知を受け、鈴子たちの仲は一気に冷え切ってしまう。

ちょうどそのとき鈴子は倒れる。
熱々先生から、百日咳の診断を受けた鈴子はデビューは絶望的だと悲嘆に暮れるが、数日後すっかり元気を取り戻す。ただの風邪だったのだ。

百日咳と聞いた白川と桜庭は鈴子を見舞うが、鈴子はふたりを結束させるために芝居を打つ。
まるで自分が百日咳で余命いくばくもないかのように振る舞う。
弟・六郎によって鈴子の猿芝居は露見するものの、3人は仲睦まじくなる。

そんな鈴子たちに吉報が舞い込む。
なんと新人3人ともデビューすることが決まったのだ。
正式入団が決まり、鈴子たちは芸名を決める。

白川は「リリー白川」。
桜庭は「桜庭和希」。
鈴子は「福来スズ子」。

2人が演じたのは「水の滴の精」役だが、無事デビューを果たし、初の単独公演は成功する。

第3週「桃色争議や!」

あらすじ

それから6年の歳月が流れる。

「梅丸少女歌劇団」はもう映画の幕あいで催される小粒なショーではなく、花咲に匹敵する本格的レビューショーを催す歌劇団としてファンに支持されるまでに成長した。
スズ子、リリー、和希も一人前のレビューガールに成長し、新人を指導するまでになっている。

だが和希は心中穏やかではない。
なぜなら、花咲から移籍してきた後輩・秋山美月が男役として実力を発揮し、同じ男役である和希の立場が揺らいでいるからだ。秋山から厳しい突き上げをくらう和希はある日、練習に来なくなる。

スズ子もまた自身の才能のなさに悩んでいた。
「自分にはこれという売りがない」と。
洋食屋でライスカレーを食べながら、葛藤しつつも梅丸にしがみつく。

そんな折、梅丸の次回公演は、娘役トップスター大和の初演出が決まる。
大和は出演者全員にラインダンスを提案し、ピアニスト股野の伴奏で、慣れないダンスの訓練が始まる。

一週間練習を休んでいた和希が退団の申し入れをしたとき、スズ子はいつものように強く説得することができなかった。スズ子自身も悩んでいたからだ。

だが、自分にも才能がない自覚があったから、スズ子は和希の不安に寄り添うことができた。
自分の本音をストレートに和希にぶつけるスズ子。その想いが和希に通じたのか、ふたりは泣きじゃくりながら抱き合って練習に向かう。

梅丸の歌劇団員たちは結束を固めるが、今度はまったく別の角度から危機が訪れる。
昭和4年(1929年)の世界恐慌の余波が、日本にも押し寄せていた。
国内の不況は著しく、「梅丸少女歌劇団」の母体である会社の経営も逼迫させていたのだった。

やむにやまれず、人員削減と賃金カットを行うことが発表され、歌劇団員たちにも動揺が走る。
もともと十分ではない給与なのに、あまつさえ賃金カットされては生活がたちゆかない。和希もそのひとりだ。
少しずつ歌劇団を去っていく人たちに、残るスズ子たちの胸中も複雑である。

となれば、思い切った行動を起こすのも自然の勢いだった。
大和を筆頭に会社側に嘆願書を提出する歌劇団員たち。
賃金の是正と辞めた団員たちを呼び戻すためだ。もちろんスズ子の意気も上がっている。

強気な姿勢を崩さない彼女たちの騒動は、「桃色争議」として新聞に取り沙汰された。
事態を収拾するために会社は工作し、スズ子たちに一時金を支払うことで争議をやめさせようするが、大和やスズ子たちは断固として拒否する。

会社と折り合いがつかない大和はストライキを呼びかけるが、橘は猛反対。大和を翻意させようと説得する。
なぜならストライキをすれば、たとえ会社が要求を呑んだとしても大和は梅丸に居続けることはできないからだ。

すべてを承知したうえで、大和はストライキを決行。
スズ子もまた大和に従うのだった。

『ブギウギ』第1週から第3週までの登場人物・相関図

「ブギウギ」第1週の登場人物・相関図
すべてのキャストを網羅しているわけではありません

『ブギウギ』ドラマ作品情報(第1週~第3週)

出演者花田鈴子(芸名:福来スズ子)・・・趣里
鈴子(子供時代)・・・澤井梨丘
花田梅吉・・・柳葉敏郎
花田ツヤ・・・水川あさみ
六郎・・・黒崎煌代
六郎(子供時代)・・・又野暁仁
アサ・・・楠見薫
タイ子・・・藤間爽子
タイ子(子供時代)・・・清水胡桃
熱々先生・・・妹尾和夫
易者・・・なだぎ武
ゴンベエ・・・宇野祥平
キヨ・・・三谷昌登
アホのおっちゃん・・・岡部たかし
大和礼子・・・蒼井優
橘アオイ・・・翼和希
白川幸子(リリー白川)・・・清水くるみ
桜庭辰美(桜庭和希)・・・片山友希
秋山美月・・・伊原六花
林部長・・・橋本じゅん
梅丸社長・大熊熊五郎・・・升毅
茨田りつ子・・・菊地凛子
羽鳥善一・・・草彅剛
語り・・・高瀬耕造
放送局NHK
放送時間【NHK総合】
毎週月~土 午前8:00~8:15ほか
※土曜日は1週間の振り

【NHK BSプレミアム/NHK BS4K】
毎週月~金 午前7:30~7:45
※土曜日のみ午前9:25~10:40で1週間分一挙放送
脚本足立紳/櫻井剛
演出福井充広/鈴木航/二見大輔/泉並敬眞/盆子原誠ほか
制作統括福岡利武/櫻井壮一
音楽服部隆之
主題歌『ハッピー☆ブギ』
※中納良恵(EGO-WRAPPIN’)/さかいゆう/趣里
見逃し配信NHKプラスNHKオンデマンド

「ブギウギ」第1週~第3週の感想・考察

『ブギウギ』感想とか考察とか

つかみはばっちり!生彩放つ “おちゃっぴい”

『ブギウギ』第1回の冒頭から、戦後復興のさなかの昭和23年、ブギの女王として脚光を浴びている福来スズ子が登場。
からだ全体を使って高らかに歌う『東京ブギウギ』で怠りなく視聴者のハートをつかみます。

そこから、高瀬耕造さんのやさしい語りに導かれて、時を遡り、福来スズ子の激動の半生が展開していく ━━ これがじつに自然な流れなので、慌ただしい朝の時間でも視聴者はじっくり腰をすえて物語につきあいたくなる。手練れの仕事です。

『ブギウギ』の第1週と第2週で存在感をみせつけたのが、澤井梨丘さん。
ヒロインスズ子の少女時代を見事につとめあげました。
逸材といってもいいでしょう。

彼女が演じるスズ子を一言で表現すれば、「生彩放つ “おちゃっぴい」。
よくしゃべるんですが、とってもかわいいんですね。

『恋はやさし野辺の花よ』は絶品でした。
じつにのびのびと心地よさそうに歌うのがチャーミング。

歌のうますぎる子役は感心させられるわりには印象が残らないことが多いのですが、澤井梨丘さんは別格です。

新喜劇のノリもいけるし、歌わせても達者、シリアスな演技もいける。とくれば、文句のつけようなし。
老若男女問わず “おちゃっぴい” に魅了されて目が離せなくなるでしょう。

大正末年~昭和2年の、心地よくてやさしい世界

ヒロインが少女時代を過ごしたのは、1926年頃の大阪の福島。
ちょうど100年前でしょうか。
のほほんと親密な空気が横溢していて見ていて心が和みます。

花田家が営む銭湯「はな湯」も情緒があっていいですねぇ。
久しぶりに銭湯に行きたくなりました。

「はな湯」を中心とする地域コミュニティには活気づいていて、みんなが集まってきて、わいわいがやがや楽しい交流しています。相互扶助の精神が脈打っていて、ほどよく迷惑をかけあいながら人生の不条理を笑い飛ばす、そんな闊達で溌剌とした息吹を感じさせるのです。あの「ホンワカパッパ」の脱力感ある吉本新喜劇のテーマが流れてきそうな雰囲気がたまらない。

父・梅吉と鈴子が道頓堀に行くシーンもあるのですが、レトロな街のたたずまいは情趣に富んでいて見ていて飽きません。

当時の大阪の忠実に再現できているかどうか、それはわかりません。
時代考証の観点でドラマを楽しむのも一興ですが、『ブギウギ』を見ているうちに、そんな枝葉末節はどうでもよくなりました。

ここまでおさまりがよい世界観なら、たとえ虚構でも文句のつけようがありません。
せめてフィクションくらいは心地よくてやさしい世界にひたりたい。
そういう視聴者って少なくないと思うんです。

ざっくばらんな処世の知恵

花田家の家族をはじめ、『ブギウギ』が登場人物たちは、気さくで気の置けない人たちばかり。
見ていて胸のすくようないい心持ちになれるんですね。

とくに第1週で水際立っていたのは、母・ツヤさん(水川あさみ)です。
気性がさっぱりしていて、おおらかで細かいことにこだわらない女丈夫といえましょう。
いかにも気のいい大阪のおばちゃんという感じですが、ひとつひとつの言動にはすっきりと筋目が通っています。

小難しいことは何も言わない。
子どもでもわかる平易な表現で、人間の理(ことわり)を噛んで含めるようにスズ子に教え諭すのです。
それは、”ざっくばらんな処世の知恵”と言ってもいいかもしれない。

印象的なツヤさんの言葉を紹介させてください。

自分が芸者の娘であることにコンプレックスを抱くタイ子が松岡への想いをなかなか伝えられないのを見て、じれったくなるスズ子。「タイ子ちゃんはもっと自信を持てばいいのに」と、つい自分の尺度で考えてしまうのです。

そんなモヤッとしたスズ子から相談を受けたツヤさんは、「そやなあ…」とためらいがちに愛娘に噛んで含めるように言います。

せやけどな、スズ子が大丈夫や言うても、タイ子ちゃんは大丈夫やないねん
誰もが、言われると悲しい気持ちになることをひとつやふたつは持ってるもんや
それを気にせんでええって軽く言うのんは、お母ちゃんは違う思うねん

自分にとって当たり前のことでも、相手にとっては当たり前であるとは限りません。
自分がしてもらって嬉しいことでも、相手にとってはものすごく悲しいことかもしれません。
これって、誰でも頭ではわかっていそうで、ふだんの行動レベルや思考様式にまで落とし込めている人は少ない。

それをやさしく伝えるツヤさんの手ざわりのやさしさが胸に沁み入ります。
そしてスズ子へのフォローも忘れません。

そのおせっかいがあんたのええとこでもあるんやけどな

母から受け継いだ、”ざっくばらんな地べたの哲学”が、ブギの女王・福来スズ子をかたち作っているように思うのです。

弱者へのまなざしがやさしい

ヒロイン・スズ子は、たくましくて快活な母にだけ影響を受けているわけではありません。
父・梅吉さんの影響も、その人格形成に深く与っているように思います。

この梅吉さんがなんとも言えずいいんですね。
人間の弱さや愚かさに寛容といいますか、無理に強くあろうとしない姿勢が、人間臭くて共感できます。

当時ですと、「男子の本懐」とかなんとか言って武張った連中も多かったでしょう。
梅吉さんのたゆたうような男性はマイノリティだったと思うんです。

でも、人間として不誠実ではなく、むしろ誠実な人ではないでしょうか。
少なくとも梅吉さんは自分の弱さと正面から向き合って、それを自覚している。
そういう自覚は、誠実さがなければ生まれないでしょう。

そんな弱者に対するまなざしのやさしさは、スズ子も受け継いでいるようです。
それは同時に、自分の弱さと真摯に向き合える誠実さを持っているということ。

第3週、梅丸少女歌劇団の同期である桜庭和希が、後輩の秋山美月に追い抜かれるツラさに堪えかね退団しようとします。スズ子もまた自分の「売り」が見つけられず悩んでいましたが、弱い自分をさらしたまま、和希にぶつかっていくのです。

ワテも怖いねんで。なんも売りが見つかられへんし。下手やけど歌って踊るんがどうしようのなく好きやなねん。つらいよなあ。わてらどんどん後輩に抜かれたり、差つけられたり。せやけど、ふたりで抜かれよ。差ぁつけられよ。一緒にへこたれよ。それでいつか見返したろ!

自分もまた弱くてもろくて情けない立場なんだ。それでも、この道以外に選びようがない ━━
そんなスズ子のメッセージは、どんな美辞麗句よりも、和希の心を激しく揺さぶったことでしょう。
和希だけでなく、自分の生き方に思い悩む多くの視聴者に届いたのではないかと。

「ブギウギ」第1週~第3週の時代背景

『ブギウギ』時代背景

大正末年~昭和2年
『ブギウギ』は大正15年(1926年)の末からスタートします。
大正天皇がお亡くなりになったのが年も押し詰まった12月25日でした。
そこから「昭和」の元号が始まるのですが、昭和元年はたった1週間しかなかったことになります。

昭和2年
スズ子が「梅丸少女歌劇団」に入団した当時は、第一次世界大戦の影響で物価は下落し、不況が続いていたようです。「ぼんやりとした不安」という言葉をのこして、芥川竜之介が自殺したのもこの年でした。

昭和3年
張作霖爆殺事件、いわゆる「満州某重大事件」を起こります。
国際的にも大きな事件です。

昭和4年
この年の流行語は、「大学は出たけれど」。
これは小津安二郎監督の映画作品のタイトルですが、当時の世相はぴたりと言い当てていたようです。
東大卒の就職率が30%ですから、深刻といえば深刻ですね。
またこの年、米国ウォール街で株価が大暴落。
世界恐慌が始まりますが、今みたいにネットやスマホがない時代ですから日本人のほとんどは知らなかったことでしょう。その証拠に、東京では「モガ」(モダンガール)、「モボ」(モダンボーイ)が流行。
女性は断髪・洋装し、男性は西洋風に気取ってみせる。そんなハイカラな文化が醸成された時代でした。

昭和5年
世界恐慌の影響が顕著になってきます。
輸出品である生糸の価格が暴落、農産物の価格の下落も深刻。
当然、失業者があふれかえりました。

『ブギウギ』の第3週はちょうどこの頃の話。
「梅丸少女歌劇団」が人員削減・賃金カットを決行するのはけっして非道なふるまいではなく、経営者側も断腸の思いだったことでしょう。

『ブギウギ』第1週~第3週のキャストの魅力

『ブギウギ』第1週~第3週の出演者について

趣里(福来スズ子)

強く、たくましく、泥くさく、そして艶やかに ━━ 梅丸少女歌劇団のモットーそのままの人です。
どこまでもあけっぴろげで ”地べた” の庶民感覚をキープしていても、可憐さを損なうことはありません。

コメディエンヌとしての資質も発揮し、『ブギウギ』に出演したことで、芸域を拡げていくのは確実でしょう。

趣里さんのノリツッコミは特筆に値します。
芸人さんみたいに、さらりとこなすと、彼女の持ち味は引き立たないでしょう。
ちょっとぎこちなくて野暮ったいところが、比類のない彼女の魅力なんじゃないかと。

『ブギウギ』のヒロインにお行儀のよさなんて要りません。
”勢い余って前のめり”くらいがちょうどいいのではないでしょうか。
でなければ、福来スズ子を演じきることなんてできません。
そういう体当たりな演技が、視聴者の心を激しく揺さぶるのではないでしょうか。

体当たりの野暮ったさを通してしか表現できない “優美さ” がある ━━ 趣里さんの演技を見てそんなややこしいことを感じました。慈しむべき演技です。

水川あさみ(花田ツヤ)

これまでノーマークだった俳優さんなので、いきなり堂々とした達演を見てびっくりしました。
ネイティブの関西弁は耳に心地よく、所作もこなれていて、地に足の付いた生活感の匂わせ方もすばらしい。

夫・梅吉さんとの息もぴったり。
勢いよくほとばしる「もぅっ!なにをいうてんねん」のツッコミは見事というしかありません。

ツヤさんは「女丈夫」という言葉がぴったりのたくましい女性ですが、冷徹になりきれない部分があるように感じました。彼女が抱えているひとつかみの弱さが、梅吉さんの弱さと共鳴しているんじゃないかと。

もしかしたら、ツヤさんというキャラクターは、実際の笠置シヅ子さんに近いんじゃないのかなと。

俳優・水川あさみさんは相当自分に厳しい人なんじゃないでしょうか。
水も漏らさぬ演技には、強い意志とストイックさが感じられます。
彼女が出演している他の映像作品も見たくなりました。

柳葉敏郎( 花田梅吉)

ギバさんと言えば、トレンディ俳優というイメージ ━━ あるいは一世風靡セピア時代のキレッキレのダンスのイメージ ━━ が強く、いまいちピンとこなかったんですが、『ブギウギ』を見れば見るほど、作品世界に馴染んでいるキャラクターだなあと愉快になってきます。

肩の力が抜け、いい意味で吹っ切れた演技。
弱さを肯定するしかない男の諦観と屈託が胸に迫ってくる。

稚気たっぷりだけど、そらぞらしくならないように抑制をきかせた演技には「ほぅ…」と唸らされます。
柳葉敏郎さんの梅吉っつぁんにはまったく退屈をおぼえないのです。

梅吉っつぁんは、『ブギウギ』の中では実はものすごく難しい役柄のひとつだと僕は思っています。
あの滋味豊かな “だらしなさ” は、則(のり)を越えぬ練達の演技によって表現されているのではないでしょうか。

清水胡桃(タイ子※子役)

少女時代のスズ子が「動」なら、タイ子は「静」であり、スズ子が “おちゃっぴい” なら、親友タイ子は “おしとやか” です。
この好対照が、なんとも微笑ましい。

どこまでも清純であり、それでいてスズ子より少し成熟しています。
スズ子とはどこまでも対等であろうとする健気さがタイ子の美質といえましょう。

特筆に値するのは、清水胡桃さんによる少女特有の含羞の表現です。
眼が覚めるようなみずみずしさにハッとさせられます。

澤井梨丘さん同様、清水胡桃さんも将来どんな活躍をされるのか期待に胸がふくらみます。

蒼井優(大和礼子)

﨟(ろう)たけたエレガンス。
すらりと姿勢ただしく、挙措は流麗にして清冽。
たおやかでありながらも、潔さを見失わない。

「大和礼子」は、やまとなでしこです。
一見冷たさを感じさせるものの、心を許す相手とはあたたかく情愛を通わせあう、そんなタイプだと思います。

蒼井優さんの尋常一様ではない雅やかさと楚々としたたたずまいは、2歳の頃から続けているクラシックバレエが負うところが大きいのでしょう。
ベテランの堅実な演技ですが、みずみずしい緊張感がひしひしと伝わってきます。
蒼井さんにとって「大和礼子」役は腕のふるい甲斐があったのではないでしょうか。

女役トップスター「大和礼子」の歌と踊りをずっと観ていたいのですが、『ブギウギ』の進行上、そういうわけにもいかないのでしょう。「梅丸少女歌劇団」のレビューの完全版をBlu-ray化してほしいです。

翼和希(橘アオイ)

第2週「笑う門には福来る」から登場した「橘アオイ」の存在感には目を見張るものがありました。
新入りのスズ子たちへの妥協を知らない峻烈さは堂に入っています。

押し出しが強いですが、非情には徹しきれない人。
はからずもやさしさやあたたかさを伝えてしまうタイプでしょう。

360°全方位的に男前な翼和希さんは『ブギウギ』に出演したことがきっかけで多くのファンを獲得したのではないでしょうか。イメージと違ってとても気さくでユーモアのある人だと思うんです。

OSK日本歌劇団のレビューを観たくなりました。
「花咲」よりも魅了されるはずです。

清水くるみ(リリー白川)

役者としての実力を感じさせる、しっかり腰の据わった演技。
「リリー白川」は、庶民的な感覚をもつお嬢さんですから、役柄として難しいのではないでしょうか。
でも清水胡桃さんは、「リリー」を嫌味なキャラにしないためにうまく抑制をきかせているように思います。
味付けが濃くなりすぎないように、それでいて個性を確立させる工夫が奏功しているようです。

片山友希(桜庭和希)

「桜庭和希」の繊細さ、狷介さ、不器用さを、充実した演技で表現しています。
思春期の女の子の生硬さともろさ、その不均衡は見ていてせつなくなりますが、片山友希さんの確かな演技力の証左といえるでしょう。
アーティスティックな感性を感じさせる役者さんです。
これからますます芸域を拡げていかれるでしょう。

伊原六花(秋山美月)

「桜庭和希」とはまた趣を異にする生硬さをもつ女の子。
花咲から移籍してきた優等生で、ちょっとツンケンしていますが、憎めないかわいらしさがあります。
伊原六花さん、とてもクレバーな役者さんですね。
「秋山美月」に求められた役割を十全に果たしているだけでなく、プラスαおまけをつけて差し出しているような演技。
サービス精神旺盛だけど自分を安売りしない役者さんです。

さいごに

『ブギウギ』の魅力は、なんといっても頭をからっぽにして楽しめること。これに尽きるでしょう。

ヒロイン・スズ子にはカラリとしてややこしい含みがないので、安心して「ズキズキワクワク」しながら物語に身を委ねることができます。「額面通りに受け取っていいんだな」という安心感ですね。

名作映画と多くは、あまりにも滋味と毒が潤沢ですから、ちょっと身構えてしまうんです。
もちろん身構えて観るに値する作品ほどインパクトは凄まじいですが、毎日鑑賞するのはいささかハードかもしれません。

その点、朝ドラ「連続テレビ小説」は、さっぱりとした「おみをつけ」という感じ。
あたたかくて栄養満点、しかも飽きがこないから毎日食べたい。

『ブギウギ』が始まって3週間。
すっかり朝ドラが習慣化してしまいました。
仕事が忙しくて、録画した『ブギウギ』観るのをすっぽかすと、なんだか気持ち悪くなる。
これじゃ筋トレと同じですね。

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