『ゴッドファーザーPART3』(最終章)考察とみどころ※再評価が望まれる佳品

『ゴッドファーザーPART3』【最終章】(1990年・2020年)

主演:アル・パチーノ/ソフィア・コッポラ/アンディ・ガルシア

1990年公開の『ゴッドファーザーPART3』をフランシス・フォード・コッポラが再編集して、2020年に決定版にして最終章を公開。1979年、実際に世を騒がせたバチカンのスキャンダルを背景に、ファミリーのドン、マイケル・コルレオーネの黄昏と悲劇を描いたストーリー。一大叙事詩の掉尾を飾るにふさわしいこの作品の考察やみどころ、今すぐ視聴できる動画配信サービスをご紹介。

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目次

『ゴッドファーザーPART3』(最終章)作品情報

監督フランシス・フォード・コッポラ
脚本フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ
制作フランシス・フォード・コッポラ
撮影ゴードン・ウィリス
音楽カーマイン・コッポラ
出演・マイケル・コルレオーネ:アル・パチーノ
・ケイ:ダイアン・キートン
・メアリー・コルレオーネ:ソフィア・コッポラ
・ビンセント・マンシーニ:アンディ・ガルシア
・コニー・コルレオーネ:タリア・シャイア
・ドン・アルトベロ:イーライ・ウォラック
上映時間158分
ジャンルヒューマン

『ゴッドファーザーPART3』(最終章)のあらすじ

1970年代の終わり。
老境を迎えたマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)は、裏社会から足を洗いファミリーが築き上げた ”帝国” を合法的な組織にしようと心を砕いていた。

マイケルは「ヴィトー・コルレオーネ財団」を設立。
バチカンの資金運営を司るギルディ大司教から要請を受け、世界最大の投資会社の株を取得したのだった。

マイケルはファミリーの一員として、ビンセント(アンディ・ガルシア)を迎え入れる。
ビンセントは、亡き長兄ソニーと愛人とのあいだに生まれた子である。
マイケルの息子アンソニーがオペラ歌手の道を進んだため、ビンセントが次のゴッドファーザーの候補だ。

だが、父同様、血の気の多いビンセントは、健全化をはかるファミリーを血なまぐさい暴力の世界へと戻しかねない。
あまつさえビンセントはマイケルの娘であり従姉妹であるメアリー(ソフィア・コッポラ)と男女関係になる。
ふたりの関係を解消するよう、マイケルはビンセントに働きかけるのだった。

そんななか、ファミリーの幹部会に参加したマイケルは、何者かにヘリコプターで会場を襲撃される。
ヴィンセントの助けによって命からがら逃げ出したものの、持病の糖尿病を悪化させて倒れてしまう。

『ゴッドファーザーPART3』(最終章)のみどころ・考察

『ゴッドファーザーPART3』(最終章)考察と感想

1990年公開の「PART3」から、30年後「最終章~マイケル・コルレオーネの最期」へ

『ゴッドファーザーPART3』の公開が1990年である。
なにしろ、「PART1」と「PART2」が映画史上に残る完成度の高さだ。
一大叙事詩のフィナーレとなる「PART3」への期待値は尋常でないほど高かっただろう。

蓋を開けてみると、賛否両論というより酷評が多かったようである。

制作・監督のフランシス・フォード・コッポラの胸にどんな感情が去来したのだろう。
30年の時を経て、コッポラは「PART3」を再編集して、「最終章~マイケル・コルレオーネの最期」を公開した。

筆者は「PART3」(オリジナル版)は未視聴だから、「最終章」との比較ができない。
「最終章」は12分短くなっている。
コッポラが修正を施したのは363箇所。
新たなオープニングとエンディングに加え、音楽の導入部分に変更が加えられたという。

だが、再編集を割り引いても、なぜ「PART3」が酷評されたのかよくわからない。

たしかに「最終章」は全体に間延びした印象が拭い難く、前2作に比べると覇気を欠いている。
ドンパチが少ないので、血の気の多いファンはいささか物足りなさを感じただろう。
メアリー役のソフィア・コッポラの演技に、不服を申し立てたくなる映画ファンの気持ちも尊重するつもりだ。

それらをふまえたうえで、あえて一言言わせていただければ、わかりやすい場所を探したところで「最終章」の滋味はすくい取れないように思う。

監督コッポラの息遣いが伝わってくる

今作は、マイケル・コルレオーネの物語と、監督フランシス・コッポラの物語が「同期」していると考えたら、「最終章」の見え方が変わってくるのではないだろうか。

「PART3」は、コッポラが苦境に喘いでいたなかでクランクインした。
1982年公開作品『ワン・フロム・ザ・ハート』が興行的に失敗。その負債が1200万ドルにおよび、コッポラのプロダクションである「ゾーエトロープ」の撮影所を差し押さえられ、破産状態だったという。

「PART3」をヒットさせて起死回生を考えたコッポラだが、稼いだ額は負債の半分にすぎなかった。
さだめしコッポラは落胆しただろう。

だからというわけでもないが、全3作品のなかで、この「PART3」は、もっとも監督コッポラの息遣いが感じられるのだ。

「PART1」と「PART2」で世界的評価を得た監督の枯淡が、この作品に格調高い陰りを与えている。
「世間の鼻を明かしてやろう」という衒いや、「大向うを唸らせてやれ!」という野心はまるで感じられない。
『ゴッドファーザー』とともに紆余曲折を経たコッポラの強く脈つ想いと静かな諦観、名状しがたい屈託が伝わってくる映像芸術に仕上がっていると思う。

毒気や灰汁(あく)の抜け方、色の褪せ方、その風合いには興趣が尽きない。
コッポラの私情の挟ませ方が、”巧まざる” という感じで、素直に受け入れられるのだ。

『ゴッドファーザー最終章~マイケル・コルレオーネの最期』━━ 再評価が望まれる佳品だ。

ラスト30分のオペラ劇場のシーンに緊迫感

今作の見せ場は、なんといってもラスト30分のオペラ劇場のシーンだ。
マイケルの息子、アンソニーが出演するオペラは、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」。
ディレッタントであるコッポラの作家的企みがうかがえる。

オペラの進行とともに、マイケル側と敵対勢力側、全部で6名の殺害計画が進められていく。

オペラを挟みつつ、それぞれの計画が交互に映し出されて、緊迫感を盛り上げる。
何が飛び出すかわからないし、いつ誰が死んでもおかしくはない。
ドンパチが少ない「PART3」(最終章)のなかでも、オペラ劇場では固唾をのんでしまった。

とりわけびっくりしたのは、マイケルが敵対勢力の黒幕に送り込んだ刺客の実行力である。
銃もナイフも何も持たない刺客が、いかにして黒幕を殺すのか……突破者の恐ろしさに誰もが慄然としてしまうだろう。

そしてオペラ劇場のラストは、なんともいたましい。
胸が張り裂けんばかりに慟哭するマイケル・コルレオーネの表情は、この一大叙事詩の悲劇性をいやましに高めている。

このラストを見て率直に感じた。
もしかしたらコッポラにとって、「PART3」(最終章)が作品としていちばん愛しいんじゃないかと。

「PART1」と「PART2」は、リカット(再編集)の余地ならば毛筋ほどもないマスターピースとして独り立ちしてしまった。
それを生み出したコッポラですら、もう手に負えないほど。

だが、「PART3」(最終章)は、監督コッポラがコントロールできる場所に留まり続けているように思う。
制作・監督の立場からすれば、「PART3」(最終章)ような作品こそ、愛着もひとしおなのではあるまいか。

娯楽映画としての活きの良さが足りなくても、世間の評価が芳しくないとしても、生みの親としては、ただそばにいるだけで嬉しい。マイケル・コルレオーネにとっての、息子アンソニー、娘メアリーのように。

『ゴッドファーザーPART3』(最終章)のキャストについて

『ゴッドファーザーPART3』(最終章)キャストについて

アル・パチーノ(マイケル・コルレオーネ)

前作から16年。
腰が据わった充実の演技による円熟のゴッドファーザーだ。
技巧をこらしすぎず、すこしぎこちなさを覗かせる感じが「マイケル・コルレオーネの最期」を予感させる。

目的のためなら手段を選ばないマキャベリストの冷たさは変わらないが、寄る年波には勝てない寂寥感が加わり、よりマイケルが陰影が際立っているようだ。
糖尿病という設定には掬すべき味がある。

それでいて男の官能や艶っぽさを失ってはいない。
主人公として重厚なストーリーを牽引する力にも不足はない。
ただ、以前のように物語を力業で引っ張ってゆくというのではなく、ずるずる引きずってゆくという印象である。

怒りを爆発させる様子は、まるで半透明のヴェールを一枚隔てているように伝わってくる。
マイケルが抱える人間的なえぐみや凄みが、いくぶんくぐもって伝わるように、パチーノがさじ加減を加えているのだろうか。衰退途上のマイケルを表現するために。

枢機卿の前で、過去の犯した罪を懺悔するマイケル。
物語のラスト、悲しみのあまり慟哭するマイケル。
いずれも哀れを誘うが、嘘っぽくならないように細心の注意が払われている。

アル・パチーノは紛うことな名優に違いないが、この人の芸の卓越を言葉にするのは至極難しい。
ロバート・デ・ニーロやダスティン・ホフマンとは趣を異にする、”くぐもったカリスマ性” といえばいいだろうか、それがこの俳優の余人をもって替えがたい魅力だと思う。

溌剌さはないが、底しれぬ胆力がうかがえる。
この人の抑えた野性味も、鬱屈した歪みも、独善的な語り口も、真似できそうで真似はできない。
アル・パチーノそのものが「芸」なのだ。世界中の喝采と敬意に値する「芸」である。

ソフィア・コッポラ(メアリー・コルレオーネ)

コッポラが「PART3」を再編集をして、決定版として『ゴッドファーザー最終章~マイケル・コルレオーネの最期』を公開した大きな動機は、娘・ソフィア・コッポラへの批判を払拭するためであろう。

もともとメアリー・コルレオーネは、ウィノナ・ライダーが演じる予定だった。
ところがライダーが急きょ降板。
白羽の矢が立ったのがソフィアだった。

第一作で、洗礼を受ける赤ちゃん役で出演したソフィアだが、18年後、第3作めの主要人物として起用されるとはゆめゆめ考えなかっただろう。
彼女自身は、当時、芸術大学に通っていて、出演するつもりはなかった。
だがコッポラは娘を説得する。メアリーという人物は、演技のこなれた大人の女優では務まらないというコッポラの判断もあったのかもしれない。けっして身びいきではないと思う。

ソフィア・コッポラの演技に対するバッシングは苛烈を極めた。
まだネットが浸透していない時代だが、いわゆる炎上に近いものだったのだろう。

深く傷ついた娘の名誉を挽回するために、父・コッポラが心を砕いて「最終章」で上書きしたのだとしたら、所期の目的を十分達成したといえよう。

「最終章」を見る限り、ソフィア演じるメアリーに不自然さはないし、余計な気負いもない。
この一大叙事詩の世界観に馴染んでいる。
なんだったら、もっと素朴さを出してもらってもいいくらいだ。

役者は、演技の巧拙だけでその価値を推し量れない。
彼女の清澄で生硬な存在感は、少女から大人になる微妙な時期を表現するのにつきづきしい。演技力とか感情表現とか以前に、その存在感が絶妙なのである。

「PART3」出演後、監督、プロデューサーとして功成り名を遂げたソフィア・コッポラ。
「PART3」(最終章)への出演は、彼女には辛かったかもしれないけど、映画人として生きるうえで得難い糧になったと思う。

筆者はもっと、女優ソフィア・コッポラの活躍を見てみたい。

アンディ・ガルシア(ビンセント・マンシーニ)

長兄ソニー・コルレオーネの私生児。

一度キレたら手を付けられない父譲りの血の気の多さを巧みに演じている。
ちょっと「うますぎる」のが、いささか鼻につくけれど、鉄砲玉の持つ危険さと男の色香に不足はない。
次期「ゴッドファーザー」の貫禄・貫目も十分だ。

アンディ・ガルシアの真骨頂を楽しめるのが『男が女を愛する時』(1994年)だと思う。
ビンセント以上にチャーミングだし、この人の持ち味を十分に発揮している。

鉄砲玉もいいけど、朴訥とした大人しい男のほうがこの人の陰りのある魅力が際立つのではないかと。

イーライ・ウォラック(ドン・アルトベロ)

『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』の卑劣漢トゥッコを見てから、この人のファンになってしまった。
年齢を重ねても、気高き野蛮さは変わらない。

「PART3」(最終章)のなかに登場する悪役のなかでも、ひときわインパクトを放っている。きなくさい個性がたまらない。

インテリジェンスに裏打ちされた卑劣さ、品の無さは、瞠目せしめるものがある。
海千山千のドン・アルトベロをイーライ・ウォラックが演じたら、余分な晦渋さが後退し、枯れてはいるが致死的な毒気が立ち上がるようだ。並の俳優ではこうはいかない。

まじりけたっぷり、苦みがたっぷり。
苦みの恵みにクセになるという意味で、豊かに実ったにがうりのような役者だと思う。

マーロン・ブランドとイーライ・ウォラックの2ショットを見てみたかった。

『ゴッドファーザーPART3』(最終章)年表

1970年頃

●コルレオーネファミリー、拠点をニューヨークに

●マイケルの長女メアリーが代表となり「ヴィトー・コルレオーネ財団」設立
合法的な組織運営、ビジネスへの路線変更を画策

1979年頃

●マイケル、バチカンへの多額の寄付によって、勲章を授与される
ギルディ大司教と知己を得る

●マイケル、叙勲のパーティを開催
兄ソニーの婚外子ヴィンセントがコルレオーネファミリーに参加

●マイケル、バチカン銀行による巨額損失問題を解決するため、ギルディ大司教に6億ドルを提供
その見返りに投資会社「インモビリアーレ」の株を取得

●新興マフィアであるジョーイ・ザザとヴィンセントが対立

●ヴィンセント、メアリーと恋仲に

●コルレオーネ家の友好マフィアであり、コニーの名付け親であるドン・アルトベッロが主催した幹部会で、マイケルらヘリで襲撃される
ヴィンセントの助けによって、マイケルは事なきを得る

●マイケル、持病の糖尿病が悪化する

●ヴィンセント、ドン・アルトベッロに接近
黒幕がドン・ルケージであることを突き止める

●マイケル、兄フレドを殺しをランベルト枢機卿に告解
ランベルト枢機卿、新教皇に

●マイケル、メアリーと別れることを条件にヴィンセントを次のドン・コルレオーネに指名

1980年頃

●マイケルの長男アンソニー、オペラ歌手としてデビュー
会場であるシチリア島でファミリー集結

●教皇ランベルト、ギルディ大司教によって毒殺される

●ヴィンセント、ルケージ、ギルディ大司教に刺客を差し向け暗殺

●コニー、ドン・アルトベッロを毒殺

●ドン・アルトベッロが雇った刺客がマイケルに狙撃するが失敗
ふたたびマイケルを狙撃するも、狙いが外れメアリーを撃ち抜く
メアリー死去

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