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『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』※癒やす側もまた癒される再生の物語

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)

主演:マット デイモン/ロビン ウィリアムズ

第70回(1998年)アカデミー賞「助演男優賞」と「脚本賞」獲得作品。並外れた数学の才能をもつ青年と、心に傷を負った精神分析医との人間的交流を描いたヒューマンドラマの傑作。脚本は主演のマット・デイモンと助演のベン・アフレックが執筆。重いテーマながら見終えたあとさわやかな余韻を残す『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の魅力をご紹介。

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』
出典:Amazon.com

この映画、こんなあなたにおすすめです!

  • さわやかな余韻が残る人間ドラマが好きな方
  • 過去の痛手を乗り越えたい方
  • パッとしない今の状態から一歩前進する勇気が欲しい方
  • 「人間の才能」について見識を広めたい方

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』作品情報

監督 ガス・バン・サント
脚本 ベン・アフレック/マット・デイモン
撮影 ジャン=イブ・エスコフィエ
音楽 ダニー・エルフマン
出演 ・ウィル・ハンティング・・・マット・デイモン
・ショーン・・・ロビン・ウィリアムズ
・スカイラー ・・・ミニー・ドライヴァー
・チャッキー・・・ベン・アフレック
・ジェラルド・ランボー・・・ステラン・スカルスガルド
上映時間 127分
ジャンル ヒューマンドラマ

ストーリー

名門MITで清掃作業スタッフとして働くウィル・ハンティング(マット・デイモン)は20歳の天涯孤独な青年。生まれながらにして天才的な数学の才能を持っている。だが、幼い頃継父に虐待されたことから、心に深く傷を負い、他者に心を閉ざしてしまう。

たびたび事件を起こしてばかりいるウィルの類まれな才能を見抜いた、MITの数学科教授ジェラルド・ランボー(ステラン・スカルスガルド)は、彼の身柄を引き受けて、セラピーを受けさせる。まじめに療法を受ける気がないウィルにセラピストたちは手を引くが、ジェラルドの同級生である精神分析医ショーン(ロビン・ウィリアムズ)は、ウィルに真摯に向き合おうとする。

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』動画配信を視聴しての感想

まめやか流筆のすさび

傷つき、愛し、再生を求めるのは天才も凡人も同じ

『グッド・ウィル・ハンティング』を見て感じた印象を筆のすさびで表現

安易な感情移入を許さないが、強くひきつけられる物語

胸にグッとくる青春映画です。計り知れない天分をもつ主人公ウィルの姿は、清々しくもありどこか痛々しい。幼少期のトラウマから来る防衛本能の働きから、人に捨てられる前に人を捨てる態度をとってしまうウィルを誰が責めることができるでしょう。

といっても個人的にはウィルにはそれほど共感できませんでした。苦悩を抱えてはいるけれど、ウィルには善良な恋人や親友や教授たちに恵まれています。しかも素晴らしい才能にも恵まれているとくれば十分果報者じゃないかと。でももしかしたら、主人公に安易な感情移入を許さないのが制作側の狙いなのかもしれませんね。

それでいて見る者の注意をひきつけながら最後までひきずりこんでゆくストーリーには目を見張るものがあります。ウィルの天才性をジェラルド・ランボー教授が見抜いたように、ベン・アフレックとマット・デイモンが共同で著した脚本の卓抜さを見抜いたガス・バン・サント監督の眼識は素晴らしい。脚本の活きの良さを損なうことなく、俳優たちがそれぞれの持ち味を反映させる ”あそび” を持たせながらも、格調高い映像世界を創りあげています。

「癒やす側もまた癒される」という美しき循環

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の登場人物たちはそれぞれの個性が見事に粒立っています。わけても精神分析医ショーン(ロビン・ウィリアムズ)の個性は特筆に値しましょう。もしショーンが、屈託のないものわかりが良いだけの精神分析医なら、少しクサめな感動物語で終わっていたかもしれません。

ショーンもウィルと似た過酷な境遇で育ち、愛する妻を亡くした喪失感に苦悩し続ける、ひとりの「傷ついた人」です。「傷ついた人が傷ついた人を癒やす」というプロセスを経て、「癒やす側もまた癒される」という美しき循環。それを克明に描写しているところにこの映画の懐の深さと本物の輝きの秘密があるのではないでしょうか。

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のキャストについて

ショーン(ロビン・ウィリアムズ)

ロビン・ウィリアムズといえばコメディというイメージが強いです。しかしこの作品では、複雑な人格をそなえた精神分析医ショーンを謹厳に演じきっています。

底知れぬ深みがあり、あるかなきかの狂気も含まれているが、包み込むような慈愛でウィルを正しき方向に導いていく━━ 正確を期すならウィルの正しき内発を促していく━━ 姿は、見る者の心をとらえて放しません。

ふだんはおだやかだけれど、感情を爆発させるシーンは胸に迫ってくるものがあります。ショーンの豊かな人格的陰影は、ロビン・ウィリアムスが彫琢を加えていったのかもしれない。

ショーンという人物を演技力だけで表現すれば、老練さだけが目立つリアリティに乏しい人物になっていたでしょう。ですがロビン・ウィリアムスは、演技性を排していくような演技に徹しているように見える。「ショーン」に清新な生命を吹き込んで、あとは自然に自由に動かしているような芝居です。

結果として、ショーンは水際立った個性を発揮していますが、どこまでも自然体であたたかい。生前の妻との美しい日々の残影を懐かしむ表情には、やさしさと哀しみがたゆたっています。

ウィル・ハンティング(マット・デイモン)

苦悩する天才青年の青春の喜びと悲哀を、無軌道と改悛のドラマを体当たりの演技で表現しています。ロビン・ウィリアムスとは対照的といえましょう。いくぶん気負いがあるものの、それがウィルの痛々しさと清々しさにうまく結実しているようです。

実人生に乏しいが、本で得た該博な知識で世界と渡りあっていけると考える青年がそうであるように、ウィルもまた「理に勝って非に落ちる」というタイプ。恵まれた天稟を生かしきれず、くすぶった生活を続けています。MITの数学教室の掲示板に書かれた難解な証明問題をこともなげに解いてしまうウィル。その姿に、自分の才能に気付きながらもどうすることもできない苛立ちと焦りと、自然な承認欲求の発露がうかがえます。

この俳優が表現する、直情むきだしの情熱と理性のせめぎあいや、激しくも純粋な感情のたぎりには、破綻の予感をはらんでいて、ヒリヒリするような切迫感を伝えてくる。マット・デイモンを見ていると、なんとなく若い頃のマーロン・ブランドとイメージが重なります。つまり、最後まで目が離せない役者ですね。

スカイラー(ミニー・ドライヴァー)

ハーバード大学で学ぶ才媛を、虚飾を排して演じています。ショーンと同様、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』という作品を輝きと彩りをくわえる、カラフルな個性の持ち主です。

スカイラー役に抜きん出た美貌の女優をキャスティングしていたら、この作品の爽やかな妙味は大きく減じられたでしょう。ミニー・ドライヴァーだから、原寸大の女子大生の魅力とてらいのない生活感を引き出せたように思います。

スカイラーは知性も教養も申し分ありませんが、人前では知の武装を解くだけの慎ましさを知る女性です。淑女に必要とされる健全な自尊心と傷つけられることへの恐怖心が、彼女の魅力をひときわ輝かせています。

核心に向かって迷いなく踏み込んでいくような彼女の姿勢は、見る者の心をひきつけてやみません。天才と才媛の恋の行方も、この映画を面白くするひとつの要素です。

まめやかコラム

【コラム】与えられた才能は自分のものではない

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の主人公のように、恵まれた才能を持って生まれたからといって、幸せな人生が保証されるわけではありません。才能を善用するためには倫理観や節度が必要であり、正しい方向づけと動機づけをサポートしてくれるメンターの存在は欠かせないのです。

さらに申し添えると、時代や社会によっても才能への評価は異なります。そのときどきの社会のニーズに合致した才能ならば高い確率で成功は約束されますが、社会的ニーズの低い才能の場合、さしたる評価を受けることもなく成功はおぼつきません。

そんな才能についてひとつ確実に言えるのは、どんな性質の才能であれ、「他人のために使うことが正しい」ということです。

才能は、天から与えられたものは自分のもののようであり、同時に自分のものでもない━━ そう考えるとすっきりしませんか? であれば、世の中の利益に使うのが本筋にして正道といえるのではないでしょうか。

どんな才能や天稟であれ、自分の利益にだけ使うというかたち閉じ込めてしまうのはもったいない。もったいないだけで済めばいいのですが、偏りや不均衡が生じれば、才能や天稟が自分の道を誤らせることにもなりかねません。

才能を貢献的に善用していくことは選ばれた者の義務である━━ 僕はそう考えています。そんな僕は、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』を見て、すべての能力において凡庸(一部凡庸以下)であることの喜びと切なさをかみしめました。。。

ちゃお!!

それではまた