映画『真昼の決闘』感想※孤立無援で戦うあなたに勇気を注入する物語

『真昼の決闘』(1952年)

『真昼の決闘』(1952年)

主演:ゲイリー・クーパー

第25回(1953年)アカデミー賞で、主演男優賞、編集賞、歌曲賞・アカデミードラマ・コメディ音楽賞を受賞。孤立無援でたたかうすべての人に見てほしい人間ドラマの名作。緊迫感あふれる演出。ゲイリー・クーパーの枯淡の演技。いずれも出色の出来。保釈された無法者の「お礼参り」に、ひとり立ち向かう決意を固めた保安官の勇姿に鼓舞されること間違いなし。

この映画、こんなあなたにおすすめです!
  • 骨太な人間ドラマが好きな方
  • 毎日、孤立無援でたたかっている方
  • たとえ周囲に反対されても、自分の意志を貫きたい方
  • これまであまり西部劇を見る機会がなかった方

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目次

『真昼の決闘』動画・DVDを見ての感想

気高き孤軍奮闘
『真昼の決闘』を見て感じた印象を筆のすさびで表現

勇気を奮い立たせるときに見るべき一本

孤立無援になったときほど、人間、心細いものはない。周囲にいるほとんどの人から、自分の考えを否定されるのである。これはかなりキツい。日頃、メンタルが強いと自負している人でも、さすがにめげるのではないだろうか。

僕は孤立無援になるときがよくある。周囲から反省を促され、自分の信念を見直して再考することもないではない。だが、どうしてもこれだけは一歩も引けないという場合は、ひとりで頑張ることになる。そんなとき時間をとって見る映画が、『真昼の決闘』だ。アウェーの状況に置かれたとき、これほど勇気を奮い立たせてくれる映画はない。

いささか古風な趣きは否めない西部劇だが、時代を経ても人を心を揺さぶる力がある。人の心の奥にある柔らかい場所にまで入り込んで、見る者をあたたかく勇気づけ励ましてくれる。僕は『真昼の決闘』に何度も助けられた。これからも助けられるだろう。

娯楽作品として素晴らしい3つのポイント

➀上映時間85分間は、そのまま物語の時間経過
この映画の ━━ 当時としてはきわめて斬新な ━━ 特色は、劇中の時間がリアルタイムで進行すること。それまでの西部劇とはずいぶん趣の異なる臨場感と緊迫感あふれるサスペンスが物語をしっかり引き締めている。


②「人間離れした英雄」ではない、苦悩する主人公
人物の造形がリアルである。
とくに主人公ケインは、マッチョでヒロイズムたっぷりな保安官ではなく、苦悩と焦燥をにじませたひとりの男として彫琢されていて、人間ドラマとしても白眉の仕上がりになっている。ケインは筋金入りの英雄ではない。弱さや恐怖心と自分の信念のあいだで葛藤するひとりの人間だ。その誠実な人間の描き方に、見る者は感銘を受けるだろう。


③主題歌「ハイ・ヌーン」
テックス・リッターが歌う主題歌「ハイ・ヌーン」も素晴らしい。上質な悲哀をたたえていて、ストーリーの襞(ひだ)にまで浸透している。実に『真昼の決闘』という作品世界と呼吸がぴったり合っている音楽だ。


「西部劇? うーんちょっと見る気になれないなぁ」という人も、『真昼の決闘』なら楽しめるだろう。

自らの筋目を通そうするたたずまいにサムライを感じさせる

ミラーが正午の汽車で帰ってくるとの報を受けるも、一度はエミィとともに町を去ろうとするウィル。結婚とともに保安官の職も辞したわけから、さして道に外れたふるまいではない。だが、ウィルは町に戻る。エミィの反対を振り切っても、自分の信念に殉じようとするのだ。
そんなウィルを町の人々は歓迎したかというと、その逆であった。「なんでわざわざ戻ってきたのか!」と言わんばかりの冷淡さで、ウィルを迎える。ミラー一味は子分を入れて4人。一人で立ち向かうには心許ないウィルは助勢を呼びかけるが、小心翼翼たる町の人々は応じようとしない。何よりも愛するエミィが去ってしまった辛さは察するに余りある。

映画のクライマックスでは、熾烈なガンファイトが用意されているが、さしたる印象は残らない。人の世の冷たさに比べれば、悪漢ミラーの存在感さえ色あせてしまう。孤立無援のウィルが悲哀と苦悩を乗り越えて、自らの筋目を通そうするたたずまいが、深く胸に沁み入る。” サムライ ” という言葉がぴったりくる保安官のたたずまいだ。

『真昼の決闘』のキャストについて

保安官ウィル・ケイン(ゲイリー・クーパー)

余計な抒情を削ぎ落として、静かな硬骨漢を演じているゲイリー・クーパー。「ミラーに殺されるかもしれない」「自分の判断は間違っていたかもしれない」という屈託を垣間見せながら戦いに臨む。そこにこの人の渋味とコクがにじみ出ているようだ。

この人は押しも押されもせぬ名優であることに違いないが、『真昼の決闘』で与えられた役柄には、名優の貫禄はそれほど感じられない。当時人気に翳りが出ていたという事情もあるだろう。

だが、ゲイリー・クーパーの「クレバーな読解力」はいささかも翳りをみせていない。西部劇にしては、いささかリアルすぎる物語への深い理解力と、矜持と怯懦を併せ持つ主人公ウィル・ケインという人物に対する読み込みの深さにプロフェッショナリズムを感じる。どう見ても、無謀な戦いを挑もうとする危なげなヒーローを、演技力に頼らず、体当たりでこなしたところにゲイリー・クーパーの役者魂が感じられるのだ。

『真昼の決闘』におけるまさに円熟のゲイリー・クーパーを見るたびに、いつも僕は襟を正してしまう。孤独や絶望の中にも、信念に殉ずる気概を持つことの大切さを教えてくれるから。

エミィ(グレース・ケリー)

後のモナコ王妃になるグレース・ケリー。『真昼の決闘』に出演当時は24歳の新人女優である。新人にしては落ち着きすぎているくらいだ。エレガントな物腰、高雅な面持ち、素肌からの美しさ、たおやかな中にも妥協のない強さ……その法外な魅力に打ちのめされた当時の観客は女優の大成を予感したことだろう。

グレース・ケリーは、「臈(ろう)長けた美姫」という形容がふさわしい。若い女優にありがちな、大向うを狙った媚びや、仰々しい演技は微塵もなく、どこまでも折り目正しい演技に徹している。それにしても、これほど艶麗な容姿をもって生まれてくるとどういう心持ちがするのだろう?

『真昼の決闘』作品情報

監督フレッド・ジンネマン
脚本カール・フォアマン
撮影フロイド・クロスビー
音楽ディミトリ・ティオムキン
出演・保安官ウィル・ケイン
・ゲイリー・クーパー
・エミィ・・・グレース・ケリー
・ヘレン・・・ケティ・フラド
・保安官補ハーヴェイ・・・ロイド・ブリッジス
上映時間85分
ジャンル人間ドラマ/西部劇

ストーリー

ハドリービルでは保安官ウィル・ケイン(ゲイリー・クーパー)と若妻エミィ(グレース・ケリー)が結婚式を挙げて、町の人々に祝福されている。今まさにウィルは連邦保安官のバッジを返して、美しい妻とともにハドリービルを後にしようとしていた。

ところが午前10時40分、幸せいっぱいな新郎のもとに電報が届く。かつて自分が逮捕したならず者フランク・ミラーが正午の汽車で帰ってくるという。仲間3人を引き連れて「お礼参り」に来るのは明らかだ。これまで敵に背を向けたことのないウィルは町に残り、ミラー一味を迎え撃つ覚悟を決める。だがエミィは夫の意向を受け入れられず、ひとり町を去ろうとする。

ウィルは町の人々に加勢を頼むが、みな恐れをなして手助けを惜しむ。中には、これまで町の治安を守り貢献してきたウィルに木で鼻をくくったような対応をする者もいる。協力者を得られぬまま苦悩するウィル。ついに時計の針は正十二時を刻もうとしていた……。

まめやかコラム

【コラム】必ずしも「正義」が正しいわけではない

20年間、折に触れて『真昼の決闘』を見返しています。
最初の頃は、ハドリービルの人々の小心さやつれなさに憤慨したものです。しかし後年は見方が変わりました。

主人公ウィルの側に立てば、なんと非情で冷淡な小市民だろうと思えるのですが、彼らには愛する妻があり、子供があり、生活と尊厳を支える仕事を持っています。守るべきものがある以上、彼らの側から見れば明らかに向こう見ずな保安官に助勢を請われても、軽々に協力することはできません。たとえ「非情」「冷淡」と言われてもです。

たしかに町の治安と安全を守る保安官ウィルは「正義」であり、保安官に復讐を期するミラーは「悪」ということになります。どちらに理があるか火を見るより明らかでしょう。しかしながら、人間、必ずしも理(ことわり)に服す生き物ではありません。もしかしたら、保安官ウィルこそ、ヤブヘビ的な存在として、「悪」とみなす人がいてもなんら不思議ではないのです。人間の本性というものを考えたら、「正義」への協力を拒む町の人々を一方的に難ずるというのはいかがなものでしょう?

「正義」というのは耳に心地よいぶん、安易に飛びつき、思考を停止させるところがあります。「正義」を僭称することで起こる紛争や暴力は少なくないことを考えると、単純明快な「善悪二元論」で割り切ろうとする態度ほど危険なことはありません。

『真昼の決闘』に話を戻しましょう。
僕は、ウィルへの協力を惜しんだ町の人々に同情しているわけではありません。

どこまでも僕はウィルに与したい。「正義」か「悪」かの二項対立を越えて。
僕がウィルの姿を見て鼓舞されるのは、彼が「正義」の人だからではありません。
自らの信念に忠実に生きざるをえない、その気高さ、その不器用さに、深く心を打たれるからです。

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