映画『燃えよドラゴン』感想※世界中が血を騒がせた規格外の体技

『燃えよドラゴン』(1973年)

『燃えよドラゴン』(1973年)

主演:ブルース・リー

伝説のカンフースター、ブルース・リーの名を世界中に轟かせたアクション映画の傑作。大迫力のカンフーは世界中の子供たちに真似されて一大ブームに。ブルース・リー急逝後、日本で初公開。伝説となったブルース・リーの過去作品もにわかに注目を集める。そんな『燃えよドラゴン』の魅力をご紹介。

この映画、こんなあなたにおすすめです!
  • 格闘技・カンフーに目がない方
  • 日頃からストレスがたまっていて溜飲を下げたい方
  • ふだん考えこみがちな方、感じることがおろそかになっている方
  • 人と交渉するとき、理屈や正論を持ち出して相手から嫌がられている方
目次

『燃えよドラゴン』感想

考えるな感じろ
『燃えよドラゴン』見て感じた印象を筆のすさびで表現

ブルース・リーを世界スターにした「体技という文法」

世界中の少年たちを魅了したブルース・リーの出世作。ストーリーは単純明快。頭を使わなくても楽しめるアクションだから、大人も子供も楽しめる。

公開後、半世紀を経ても、ブルース・リーの体技の迫力は色あせない。ラロ・シフリン作曲の、例のガツンとくるテーマ曲を耳にするとつい血が騒いでしまう。回し蹴りのひとつでもやってみたくなる。理屈を超えて元気をもらえる。そんな映画だ。

思うにブルース・リーの創造した「体技という文法」には、とてつもない説得力があるのだろう。『燃えよドラゴン』は、カンフーや空手の格闘技ブームを生みだし、ジャッキー・チェンやサモ・ハン・キンポーなどの後進に道を開いた。やはりブルース・リーという人はまぎれもなく時代の寵児だったのだと思う。

規格外のカンフーとクセの強い怪鳥音

悪党どもをバッタバッタとなぎ倒すカンフーは殺傷力の高い体技だが、目を覆うような残酷性はない。それというのもブルース・リーのインパクトが強烈過ぎるからだ。

鍛え抜かれた肉体から矢継ぎ早に繰り出される、正拳、突き、蹴りは規格外に速い。見た目にも鮮やかで確実に敵の急所をとらえる。振り回すヌンチャクのスピードたるや電光石火の如し。あんなもので打ち据えられたらひとたまりもない。

そして、例の「アチョーーー!!」という怪鳥音は一度聞いたら忘れがたい。当時、あのおびただしい殺気の奇声をはじめて聞いた観客はどれほど驚いたことだろう。そりゃ映画館を出たら、みんなが真似して世界中に一気に拡散するのも さもありなん である。

武道トーナメントより、「鏡の間」での決闘がおもしろい

ローパーやウィリアムスといういかにも強そうな脇役が登場するところから、武術大会がこの映画の見どころだと思いきや、誰かがトーナメントに勝ち進んでいる印象が薄い。最後はトーナメントだか有象無象の喧嘩だか、なんだかよくわからないことになって会場は混沌と化す。個人的にはまったく嫌いではないけれど。。。

やはり、ラストのリーとハンの「鏡の間」での死闘が『燃えよドラゴン』の見せ場だと思う。鏡像のトリックによる幻想性と、体技の迫真性が合わさって、ト胸を衝かれるような映像効果を生みだしている。

ブルース・リーの卓越した規格外の体技は、あの怪鳥音とともに時代も国境も言語もまたぎ越して、見る者の荒肝を拉ぐ。体重を思いきり載せて悪党を踏みつけたときのあの顔よ! なんとも捨て難い魅力にあふれている。つい真似してしまう。

『燃えよドラゴン』のキャストについて

リー(ブルース・リー)

オリエンタルな神秘性、カンフーの持つ芸術性と娯楽性を共存させる明晰さ、そしてセンセーショナルな早逝……レジェンドになるため条件を満たした不世出の俳優である。鍛え抜かれた肉体の裏側にどれほどの屈託を抱えていたのだろう? あるいは、ブルース・リーご本人は、感じるよりも考えすぎる人だったのかもしれない。

同じカンフースターでも、後進のジャッキー・チェンとは芸風がまるで違う。ジャッキー・チェンには親密さがあり、熱狂的なファンに取り囲まれるような「華」がある。かたやブルース・リーには、威風あたりを払うかのような殺気が沸き返っていて、容易に人を寄せ付けない。ファンは遠巻きにブルース・リーを姿を眺めて強い憧憬の念を抱いている。そんな印象が拭いきれない。

『燃えよドラゴン』一本見るだけでも、ブルース・リーという人のカリスマ性を発見できるだろう。お世辞にも健全とは言い難いけれども、人の心を激しく揺さぶり、内にある暴力性にハッと気づかせるような、翳りのある人間的魅力に輝いている。

ハン(シー・キエン)

要塞島の支配者にして、リーの少林寺の先輩格にあたる人。苦み走った悪い男の風合いがほどよくにじみ出ていて、少林寺の名を汚した帝王の貫禄も十分。

左手が義手で、アタッチメントの鉄の爪に付け替えるところが、おもいなしか、『007』の悪役を彷彿とさせて娯楽的にはエクセレントな効果を上げている。

ブルース・リーよりもはるかに年齢は上だが、この人もまたストイックに体技を磨き抜いてきた役者である。ラストの対決は見ごたえたっぷりだ。

ローパー(ジョン・サクソン)

サンフランシスコから来た武術家を扮演しているアメリカの俳優。なかなか味のある演技をする人である。借金返済のため、お金目的で要塞島のマーシャルアーツトーナメントに参加。

ブルース・リーはユーモアを繰り出すタイプでもないので、脇役まで生真面目になるとあまりにも気ぶっせいで ” 曲 ” のない映画になってしまう。その点において『燃えよドラゴン』におけるローパーの存在感は大きい。好感のもてる小賢しさと崩れた感じを醸し出していて、この作品にいくたりかの柔らかい風味を添えている。

『燃えよドラゴン』作品情報

監督ロバート・クローズ
脚本マイケル・オーリン
撮影ギルバート・ハッブス
音楽ラロ・シフリン
出演・リー・・・ブルース・リー
・ハン・・・シー・キエン
・ローパー・・・ジョン・サクソン
・ウィリアムス・・・ジム・ケリー
・スー・リン・・・アンジェラ・マオ
・オハラ・・・ボブ・ウォール
上映時間102分
ジャンルカンフーアクション

ストーリー

青年リー(ブルース・リー)は、少林寺拳法のエキスパート。米国諜報機関から、南シナ海の沖合に浮かぶ要塞島で3年に一度開かれる武術トーナメントに参加し、島の支配者ハン(シー・キエン)の悪事の証拠を探るように要請される。気の乗らないリーだったが、妹スー・リン(アンジェラ・マオ)を自死に追いやったのがハンであることを知るに及んで、仇を討つため要塞島に向かう。

トーナメントには、ローパー(ジョン・サクソン)やウィリアムス(ジム・ケリー)といった各国の武道家たちや、ハンの用心棒であるオハラ(ボブ・ウォール)もエントリー。百戦錬磨の猛者たちを相手にリーのカンフーが炸裂する……

人を動かすには、「理」ではなく「情」に訴えるアプローチも必要~『燃えよドラゴン』コラム

『燃えよドラゴン』の中でブルース・リーの言う有名なセリフのひとつが、「Don’t think.Feel.」(考えるな感じろ)。考える、つまり論理や理屈や正論よりも、感じることが大切だよ!という意味です。(違うかもしれませんが)。なかなか味わい深い言葉だと思いませんか?

論理や理屈は、人を説得するうえで有効な武器となります。すっきりとロジックが通っているからこそ人は納得するのです。正論もそう。誰にとっても正しい理屈に裏付けられているから「正論」と言える。実はそこに、論理や理屈や正論のもろさも潜んでいるのではないでしょうか。

人間必ずしも、論理や理屈や正しさに沿って動くわけでありませんよね。多くの場合、「情」で動くのが人間の本性といえましょう。しかるに、相手を説き伏せるために論理や理屈や正しさを持ち出してしまえば、その反論の難しさゆえに、悪い意味で相手を圧倒しすぎてしまうところがあります。こちらの非の打ち所のなさが相手にとって脅威になるのです。場合によっては、「自分を丸め込もうとしているのでは?」と相手の心を閉ざしてしまうことにもなりかねない。それでは元も子もありません。

では、人を動かし、豊かな人間関係を築くためにはどうすればいいか?
「理」ではなく「情」に訴えるアプローチ━━ これが大切なのです。

考えさせるのではなく、感じてもらうためのアプローチということですね。 感じてもらえさえすれば、「人を動かす」ではなく、「内発的に動いてもらう」ことも可能です。

とくにユーモアは、「情」に訴えるのに効果が高く、インパクトも大きい。まさかブルース・リーのようにいきなり怪鳥音を叫ぶ必要はありませんが、適度に「理」を逸脱して、相手の「情」を喜ばせることは、人間同士をまろやかに結びつける骨法ではないでしょうか。

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