映画『ダイ・ハード』感想※突き抜けたデタラメさに最後までつきあいたくなる

『ダイ・ハード』

『ダイ・ハード』(1988年)

主演:ブルース・ウィリス

高層ハイテクビルを舞台に、鍛え上げた肉体と豊かな機知を武器に、たった一人で武装集団に戦いを挑む刑事の姿を描くアクション巨編。第一作が世界的にヒットしたことから、シリーズ全5作品作られている。ビルの仕掛けを生かしたアクション、才走る悪役との肉弾戦&頭脳戦はラストまでノンストップで突っ走るかのよう。そんな『ダイ・ハード』の面白さをご紹介。

この映画、こんなあなたにおすすめです!
  • スカッとするド派手なアクションが好きな方
  • アクションだけでなくストーリーにこだわる方
  • 逆境を覆していくヒーローが好きな方
  • 想定外のトラブルに対する危機管理能力を高めたい方


目次

『ダイ・ハード』動画配信を視聴しての感想

裸足の刑事に・・・無風流な粋がある
『ダイ・ハード』を見て感じた印象を筆のすさびで表現

生身という ”てい” の絶対死なない男

ハイテクビルを特性を利用して、主人公VSテロリスト13人の壮絶な戦いが繰り広げられるこの作品。何度見ても見飽きることのない「デタラメだけど説得力のあるアクション映画」だ。

タイトルからして「Die Hard」と正々堂々宣言しているわけだから、「主人公ジョン・マクレーンは最後まで絶対くたばらないんだろうな」ということがわかる。つまり、主人公が手強そうな強盗グループをどうやってやっつけて、険悪になった妻との関係をどのように回復するか━━ デタラメとは知りながらもその過程をハラハラして楽しむ映画だ。

最後まで絶対くたばらないとわかっているジョン・マクレーンだが、生身感がハンパではない。身体能力は高いが、怪我もするし、泣き言をもらす。 不平を鳴らし、不運をかこつ。そんな等身大で生身という ” てい ” の、不死身のヒーローを主役にしたことで、『ダイ・ハード』は濃ゆい” ダシ ” の効いたアクションものに仕上がっている。その突き抜けきったデラタメさに観客は最後までつきあわずにはいられなくなるのだ。

監督ジョン・マクティアナンの見通しの確かさと巧緻を極めた演出、撮影監督ヤン・デ・ボンのとびきりやんちゃな撮影の至芸をとっぷり堪能していただきたい。

ノンストップアクションを面白くする人間同士の交流ドラマ

次から次へとぶっ放される仕掛けはやたらと楽しい。あちこちで乱射する。屋上をヘリコプターごと爆破する。消防ホースを命綱代わりに高層ビルからぶら下がる。壮観なアトラクションの連続だ。もたつきや淀みは一切なく、まさにノンストップ。それでいて見ていて疲れないのは、アクションと並行するように人間ドラマが描かれているからである。

テロリスト集団の巨魁ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)との駆け引きや心理戦も楽しいが、白眉はなんといっても、アル・パウエル巡査部長(レジナルド・ヴェルジョンソン)との無線による交流だろう。ナカトミビルへのパトロールを要請されて、最初にビルが占拠されていることを発見した人だ。

無線を通して、ビルのなかでジョンがひとりでテロリストと戦っていることを知るに及んで、アルはビルの外からジョンにあたたかい励ましを送り続ける。ジョンとアルがお互いの姿を知らないまま ” 戦友 ” になっていく様子はタイトなドラマのなかに清新な風を吹きこみ、ときにド派手なアクションでホットになりすぎる物語をやさしく中和する。

ひっきょう、『ダイ・ハード』の ” 大ハード ” なおもしろさは、ハンス・グルーバーとアル・パウエル巡査部長の存在に負うところが大きい。

『ダイ・ハード』のキャストについて

ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)

不運な刑事をタフに演じたこの人は、本作でブレイクし、スターの地位を確立する。『ダイ・ハード』シリーズはその後4本制作されて、すべてブルース・ウィリス主演だ。

恰幅の良い重厚な胸板を持つマクレーン刑事は、一見腕力だけで問題解決するタイプと思いきや、卓抜した身体能力にはまごうかたなき理知の輝きがうかがえる。ワイルドでタフだが、機転が速く、頭脳もシャープで、勘の働きも抜群。全体を俯瞰して、ナカトミビルの構造を解き明かそうと身体を張って飛び回る姿は、ふてぶてしくも格好いい。

となれば、完璧なヒーローに思えるが、マクレーン刑事の素晴らしいのは、泣き言、ぼやき、皮肉、野卑なジョークを連発する実寸大の人間くささを隠さないところだ。ヒーローに精彩とリアリティを与えるには、愚かさや不純さや毒を隠すことなく露呈させればいい。

ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)

テロリストリーダーをエスプリと小味を効かせた演技でこなしている。英国の正統的な舞台でならしてきた役者だけあって、非情さや酷薄さにも格調高さがうかがえる。ハンスの最初の登場シーンを見て「あ、これは面白くなるに決まっている」という予感がした。底の知れない魅惑的な悪役を配するだけで、アクション映画は無駄なくスマートに引き締まるのだ。

このハンスという人は、悪党とは言い条、確かな美学とフィロソフィーを持つ人である。矩(のり)をこえぬ節度と誠実な意志さえ感じさせる。なぜかこの人には禍々しいものがまつわりつかない。不思議な好感を催させるのである。この強敵にジョン・マクレーン刑事がどう立ち向かうか、最後のさいごまでワクワクが止まらない。期待に違わぬエンディングが待っている。

『ダイ・ハード』作品情報

監督ジョン・マクティアナン
脚本ジェブ・スチュアート/ スティーブン・E・デ・スーザ
撮影ヤン・デ・ボン
音楽マイケル・ケイメン
出演・ジョン・マクレーン
・ブルース・ウィリス
・ハンス・グルーバー・・・アラン・リックマン
・ホリー・ジェネロ=マクレーン・・・ボニー・ベデリア
・アル・パウエル・・・レジナルド・ヴェルジョンソン
・カール・・・アレクサンダー・ゴドノフ
上映時間131分
ジャンルアクション

ストーリー

舞台はクリスマスのロサンゼルス。ジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)は、妻ホリー(ボニー・ベデリア)と子供たちと休暇を過ごすために勤務地のニューヨークからやってくる。ホリーが勤めるのは34階建てのナカトミビル。その30階で社員と関係者たちのパーティーが催されていた。パーティに招待されたジョンはホリーと久方ぶりに再会するが、ちょっとした感情のすれ違いから険悪ムードに。

そのときすでに、ハンス・グルーバー率いる13人のテロリストがナカトミビルに侵入。彼らの狙いはビルの金庫にある無記名債券(6億4千万ドル相当)。ハンスらは電話線を切断し外部との接触を断ったうえでパーティー参加者全員を人質にとる。パーティー会場にいなかったジョンは異変に気付き、ホリーたちを助けるため単身捨て身でハンス達と戦う覚悟を決める……

【コラム】いざというときは「マニュアルを捨てる」という判断

無線を通して、ジョン・マクレーン刑事と男の友情を通わせたアル・パウエル巡査部長。善良な彼の存在と好対照といえるのは、マクレーン刑事を助けるどころか足を引っ張るだけの治安当局の存在です。前代未聞・想定外の事件を前にして、彼らははなはだ杜撰なマニュアル的な対処に終始するしかありませんでした。彼らは職務規定に忠実に従ったのもしれません。「危機対応にはマニュアルに従うべし」と。

でも考えてみたら、マニュアルというのは想定内の危機に対応するための、「この手順で行動しなさい」「このように考えなさい」という手引きですよね。前代未聞・想定外のナカトミビル事件にこそ、明確な指針や指南が欲しいものですが、マニュアルの性質上、それは難しいのかもしれない。。。

勘違いしないでほしいのですが、僕は何もマニュアルの有効性を否定しているわけではありません。マニュアルにはこれまでの知見やデータをもとに英知が凝縮されているわけです。ただ、前代未聞・想定外の事態において手放しで盲信できるほど、マニュアルは完璧なんでしょうか? おおいに疑問の残る点です。

では、前代未聞・想定外ではどうすればいいのか?

とくにリーダーは、マニュアルの内容を頭に入れながらも、場合によっては「マニュアルそのものを捨てる」という判断も辞さない覚悟が必要だと思うのです。まさにジョン・マクレーン刑事は、ナカトミビルでの孤独な戦いのなかで、それをやってのけました。刑事ですから危機対応のマニュアルなりセオリーなりは頭に入っていたことでしょう。それを捨てたことで、マクレーン刑事は破格な行動をとることができたのです。

これは現実のビジネスの世界にも当てはまります。
前代未聞・想定外の状況では、マニュアルを盲信するのではなく、常に相対化しながら、目の前の危機に柔軟に対処する━━ ” 言うは易く行うは難し ” は重々承知のうえですが、ふだんからマニュアルに対する構えを考えておくことは、あながち意味のないことではありません。

マニュアルの存在意義は、マニュアルの中に知性や創意を閉じ込めることではなく、マニュアルの内容の向こう側へ人間の思考を解放させ、問題解決能力の拡張を助けるところにあるのではないでしょうか。

映画『ダイ・ハード』を視聴できる動画配信サービス

『ダイ・ハード』を観るなら……
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※ただし時期によっては『ダイ・ハード』の配信およびレンタル期間が終了している可能性があります。

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