ローズ家の戦争(1989年)
主演:キャスリーン・ターナー/マイケル・ダグラス
ふたりの子どもにも恵まれ、仲睦まじく結婚生活を営んできた夫婦が、家をめぐって争いを繰り広げるブラックコメディ。離婚すべきタイミングを逃したために、目も当てられないほど泥沼化する夫婦の姿は笑えないけど、つい魅入ってしまう。見れば結婚感・夫婦観がガラリと変わってしまう『ローズ家の戦争』の感想、レビュー、みどころ、デジタル動画配信情報をご紹介。
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名作・話題作がここに集結
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『ローズ家の戦争』作品情報
あらすじ
弁護士ギャビンが、離婚相談にやってきたお客に、かつて扱った最悪の夫婦のエピソードを「反面教師」として語るかたちで物語は進められる。
最悪の夫婦とは、ローズ夫妻のこと。
オリバー・ローズは、バーバラと運命的な出会い、やがて結婚。
二人の子供もさずかり、17年間の家庭生活は順調に進んでいるかにみえた。
バーバラはひょんな偶然から、ずっと目をつけていた豪邸を手に入れるチャンスをつかみ、ローズ家が手に入れることに。
子育てが落ち着くと、バーバラは自分の力で稼ぐ喜びを見出す。
そこから、夫オリバーと些細な意見のすれ違いが明らかになっていく。
ある日、オリバーが商談の途中、体調が悪化し、病院に運ばれる。
死を覚悟したオリバーは無我夢中で遺言状書きながら、バーバラの到着を待ったが、結局妻が現れないまま、脱腸であることが判明。
退院して帰宅後、オリバーはバーバラに「なぜ亭主が倒れたのに病院に来なかったのか?」と詰め寄るが、バーバラは謝るどころか驚きの告白をする。
もし夫が死んで自分ひとりになったらと思うと、「幸せ」を感じたと。「重しがとれたような自由」を感じたと。
「離婚をしてほしい」と夫に告げるバーバラの決心は堅く、説得をしたところで翻意する気配がない。
離婚に際してバーバラの出した条件は、慰謝料を放棄するかわりに、手塩にかけて築き上げてきた「家」だけは自分に残してほしいということだった。
承服できないオリバーは徹底抗戦する構えで同僚のギャビンに相談。
バーバラの要求を無視し、家にとどまろうとするが……
作品データ
監督 | ダニー・デビート |
脚本 | マイケル・リーソン |
撮影 | スティーブン・H・ブラム |
原作 | ウォーレン・アドラー |
音楽 | デビッド・ニューマン |
出演 | ・オリバー・ローズ・・・マイケル・ダグラス ・バーバラ・ローズ・・・キャスリーン・ターナー ・ギャビン弁護士・・・ダニー・デビート ・スーザン・・・マリアンネ・ゼーゲブレヒト ・ジョシュ・・・ショーン・アスティン ・キャロリン・・・ヘザー・フェアフィールド |
上映時間 | 116分 |
ジャンル | ブラックコメディ |
『ローズ家の戦争』感想・レビュー・みどころ紹介
コメディか?スリラーか?差し込み強めな黒いコメディ
世の中には2種類の人間がいると思うんです。
『ローズ家の戦争』を「おもしろい」「笑える」という人と、「恐ろしい」「不快」という人と。
おそらくこの映画に無関心という人は少ないんじゃないかと思います。
それくらい『ローズ家の戦争』は普遍的なテーマを扱っているということですね。
では僕はどうだったかというと、「楽しみつつ戦慄した」といったところでしょうか。
コメディ→ スリラーという推移をたどったのです。
前半では笑える箇所もありました。
とりわけ愉快だったのは、バーバラの育児方法。
幼い子どもたちに惜しみなく菓子を与える理由が、「子どもは甘いものに飢えると、かえって肥満になる」というもの。
それから数年後のシーンで見事に豊満な子どもたちが登場。
バーバラの ”スジの悪さ” につい笑ってしまいました。
このままこんな感じで物語が進んでいくと思いきや、中盤から不穏な空気に覆われます。
夫婦のあいだに亀裂が生じ、”ポイント・オブ・ノー・リターン” を過ぎてしまってから、もう笑えなくなりました。
そこから家庭内は夫と妻が憎悪をぶつけあう戦場さながら。
オリバーとバーバラの闘争に、仁義は皆無です。
見ている僕は、慄然としたり、青ざめたり、終始、心のざわつきがおさまらない。
「わ、わ、わぁ……これはずいぶん差し込み強めな黒いコメディだな」と。
妻であるキャスリーン・ターナーに肩入れするのでもなく、夫であるマイケル・ダグラスに同情するのでもない。
主役のふたりにはまったく共感できないまま、映画が終わってしまいました。
狂言回しの弁護士を演じるダニー・デヴィートの視点から、気の毒なローズ夫婦の泥仕合を見物した方が、この黒いコメディは味わい深いです。
妻が別離を切り出した原因がわからない夫
なぜバーバラが離婚を決意したのか、オリバーには皆目見当がつきません。
オリバーはバーバラに肉体的にも精神的にも暴力をふるっていたわけではありません。
不倫をしたわけでもなければ、ギャンブルやアルコールにのめり込んだわけでもない。
これといって思い当たる原因がないのです。
『ローズ家の戦争』を見た人の中にも、オリバーと同じように妻バーバラが離婚をしたがる原因に首をかしげる人が少なくないかもしれません。
食事をしている夫を見ているだけで、ベッドの隣で眠る夫を見ているだけで、わけもなく殴りつけたくなるというのだから、穏やかではありませんよね。
バーバラの夫への嫌悪感は合理的な理由で説明できません。
論理的な回答を求める人には、バーバラがずいぶん身勝手な妻に思えることでしょう。
でも僕には、合理的な理由で説明できないというまさにそこに、根深い断絶を感じてしまいました。
世の中の多くの危機を迎えた夫婦も、離婚したい気持ちに明確な理由がないのかもしれません。
・・・むしろ、離婚したい明確な理由を言語化できるなら、実際に離婚するには至らないケースも多いのです。
だって、明確な理由がわかり、夫婦間で問題を共有できているというそのことが、夫婦であることの証しなのですから。
しかし、ローズ夫妻はそうではありませんでした。
夫と妻は問題を共有しなかったのです。
そこにローズ家の不幸があります。
バーバラが気まぐれな女性だから、唐突に夫の存在が疎ましくなり、離婚したくなったのではありません。
性別・年齢関係なく、人間には道理や分別が入り込む余地がない、”情念の領域” があるように思うのです。
理不尽ですが、「バーバラは離縁したくなったから離縁するのである」という、人情味を欠いた同語反復を夫は受け入れるしかありません。
夫婦と言えども、見えている世界が違う
もちろん、バーバラは一朝一夕に、夫を憎悪するに至ったのではないと思います。
微細な感情のずれ、取るに足らない齟齬(そご)、ちょっとした軋轢(あつれき)が積もり積もって、歯車が狂い、破局を避けられなくなったのでしょう。
そしてもうひとつ見落としてはいけないことがあります。
オリバー、バーバラ、双方とも、「夫婦と言えど、見えている世界が違う」という認識が乏しかったのではないかと。
ローズ夫妻は結婚17年目です。
ふたりとも配偶者がかつて他人であったことをすっかり忘れているかもしれません。
17年も一緒にいるのだから、自分の見ている世界は、何の誤差もなく相手の目にもそっくりそのまま映っているだろうと。
しかし、何十年連れ添った夫婦であろうと、まったく別の人間同士です。
必ずしも自分が見ている世界と相手の見ている世界が同じであるとは限りません。
だからこそ、一緒に過ごした年月の長さにあぐらをかくのではなく、常に相手に歩みよって合わせていく、デリケートな調整作業は必要なのではないでしょうか。
『ローズ家の戦争』を見たあと、腕組みして遠い目をしつつ、そんなことを考えるともなく考えていました。
「住」への執着はあなどれない
なぜローズ夫妻は、ここまでひどくこじらせてしまったのでしょう。
もしかしたら「住」への執着もひとつの要因かもしれませんね。
人間にとって「住」への執着は本人が考えている以上に深いのです。
とくに、もともと自分がこの豪邸を発見し、手に入れるチャンスを掴み取ったという自負をもつバーバラにとって、「住」への思い入れの深さは並大抵なものではありません。
彼女は丁寧に手入れをして、内装を整えて、住みやすい住空間を作りあげました。
言わば、バーバラにとって豪邸は、自分の身体の延長のようなもの。
いっぽう、夫のオリバーも豪邸にふさわしい家具や調度や置物を揃えました。
彼にとっても豪邸は、自分の身体の延長のように思えたのでしょう。
だからこそ、お互い一歩も退かなかった。
退かなかったことで、家庭内闘争は抜き差しならぬ仁義なき戦いにまで発展するのです。
危機を乗り越えるための「別離」
映画のストーリーに「たられば」の話をしても詮無いことでしょうが、オリバーが最初に妻から離婚を切り出された段階で、潔く応じていたらどうなっていたでしょう?
あるいは一時的に「別離」というかたちをとれば、復縁するチャンスはゼロではなかったかもしれません。
少なくともお互いの精神が減殺するだけの泥仕合は避けられたことでしょう。
バーバラが夫・オリバーに求めていたのは何だったのか?
それは、自分の精神を尊重であり、承認だったのかもしれません。
「夫は私の意思を尊重し、承認してくれた」━━ この実感をバーバラは切実に求めていたのではないかと。
ふたりの致命的な危機を避けるためなら、 ” 一時的な別離 ” という選択があってもいい。
夫婦としては解消しても、人間同士の繋がりはまだ切れていないわけですから。
別離によって、はじめてかたちをあらわす感情や感慨があるように思うのです。
それらを噛みしめることで、これまでとは違う、より深く、より豊穣な関係性のフェーズに進んでゆけるのではないでしょうか。
『ローズ家の戦争』のキャストについての感想
オリバー・ローズ(マイケル・ダグラス)
多くの二世俳優に執拗につきまとう「親の七光り」をイメージを見事に払拭した、類まれな才人です。
父・カーク・ダグラスも偉大な人でしたが、息子ダグラスは父を凌駕し、大柄な映画人として抜きん出た異能を発揮しています。
フィルムメイカーとしては、『カッコーの巣の上で』(1975年)をプロデュースし、若くしてオスカーを獲得。
役者としてのマイケル・ダグラスの黄金期は、やはり80年代といえるでしょう。
『ロマンシング・ストーン秘宝の谷』(1984年)、『コーラスライン』(1985年)、『危険な情事』(1987年)、『ブラックレイン』(1989年)等に出演。
『ウォール街』(1987年)ではアカデミー主演男優賞に輝いています。
それにしてもこの人は、凄まじい狂気を抱える危険でセクシーな女性に翻弄される役どころが好きなんでしょうか?
『氷の微笑』(1992年)もそんな映画でしたね。・・・マイケル・ダグラスはタガが外れた美女に振り回されるのが好きなんですよ、きっと。悪くない趣味です。
『ローズ家の戦争』では二枚目でも三枚目でも闊達自在に演じ分ける、役者としての芸域の広さを示しました。
怪演といってもいいでしょう。
やり手の弁護士でありながら、妻の心の機微に疎いオリバーは、物語のすべり出しから勢いがあって、好感の持てる野暮天ぶりです。
後半の泥仕合では、オリバーの苦しそうな息切れが観客にも伝わってくるような迫真の演技を見せます。
ジャック・ニコルソンと伯仲しそうな怪演ぶりに驚いてしまうでしょう。
狂気に領された妻と戦うこの人のただならぬ表情にはワイルドで色彩豊かな破綻が感じられて、『ローズ家の戦争』におけるストーリーの嘘っぽさを目立たなくさせています。
バーバラ・ローズ(キャスリーン・ターナー)
マイケル・ダグラスとは『ロマンシング・ストーン秘宝の谷』『ナイルの宝石』に続いて三作目。
よほど肌が合うのでしょう。
今作『ローズ家の戦争』でも、息が合った憎み合いを披露して、名作ブラックコメディの箔付けに貢献しています。
この人も芸達者ですね。
本格的な舞台女優としての実力を持ちながらも、映画ではコメディ、サスペンス、アクションまでキレのよい演技でこなせるほどの芸域の広さ。
今作では、実に起伏の激しい表情豊かな妻・バーバラを全身全霊オールアウトで演じきっています。
度肝を抜くようなアクロバティックな体技を披露するかと思えば、弁護士ギャビンを誘惑するシーンでは観客に固唾を呑ませる。妖艶にもほどがあるといいましょうか。
オリバーとやりあうときの ” 品の欠き方 ” には、あっぱれと言うほかありません。
男に言わなくてもいいことまで口にさせる ” 女の浅はかさ ” を際立たせた演技に、思わずのけぞってしまいました。
弁護士ギャビン(ダニー・デヴィート)
筋金入りの役者人生という形容がぴったりの人です。
80年代は監督としても役者としても旺盛な活躍ぶりをみせ、『ロマンシング・ストーン秘宝の谷』や『ローズ家の戦争』では監督と出演をこなし、辣腕をふるいました。
マイケル・ダグラスとは、『カッコーの巣の上で』のときから昵懇の間柄。
俳優ダニー・デヴィートの特徴は、タメのある演技と、相手役の個性を引き出す手際の鮮やかさにあります。
『カッコー……』における病院の患者役はじつにみずみずしい芝居を見せていました。
強烈で鮮やかな印象を残しています。
丸みを帯びた外見のわりには、”骨っぽい” 演技をする人なんですね。
あるいはジャック・ニコルソンの影響も受けているのかもしれません。
なによりこの人の卓抜な全体俯瞰力は、マイケル・ダグラスや多くの映画人も認めるところでしょう。
監督として大成するのも、さもありなんです。
さいごに
『ローズ家の戦争』は以下にあてはまる方におすすめです。
- 倦怠期を迎えた夫婦
- 新婚ホヤホヤの夫婦
- さして問題が見当たらない夫婦
- 未婚のカップル
- いつかは結婚したいと考えている人
・・・まあだいたいの人にあてはまります。
夫婦とは何かをあらためてじっくり考えてみたい人にもおすすめです。
ぜひこの機会に、『ローズ家の戦争』をご覧になってください。
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