『恋愛小説家』動画の感想※ 近寄り難い人だけど、なぜか遠巻きに応援したくなる

恋愛小説家

『恋愛小説家』(1997年)

主演:ジャック・ニコルソン/ヘレン・ハント

第70回アカデミー賞主演男優賞と主演女優賞獲得。偏屈・毒舌・潔癖性の恋愛小説家と行きつけのレストランで働く女性の恋を上質なユーモアとペーソスを交錯させて描いた作品。鼻持ちならない主人公がいつのまにか愛すべき人物に見えてしまうジャック・ニコルソンの秀演は見ごたえあり。

出典:Amazon.com
この映画、こんなあなたにおすすめです!
  • おとなの恋愛映画がお好みの方
  • 名優の演技を楽しみたい方
  • 周囲から「変わってるね」と言われて気落ちしてしまう方
  • 自分の性格は一生変らないとわかっていても、自分を変える努力をしている方
目次

『恋愛小説家』一筆感想

隅に置けない奇人
『恋愛小説家』を見て感じた印象を筆のすさびで表現

あらすじ

恋愛小説作家メルヴィンは性格が円満とは言い難い人物。容赦ない毒舌と不寛容な性格で周囲から嫌われている。隣に住むゲイの好青年サイモン(グレッグ・キニア)もそのひとり。彼の愛犬バーデルをめぐってトラブルを起こり、隣人同士険悪の仲に。そのうえメルヴィンは潔癖症のため、行きつけのレストランには自前のフォークとスプーンを持参する始末。あきらかに「招かれざる客」として扱われている。

そんなメルヴィンが唯一心を許せるのが、ウェイトレスのキャロル(ヘレン・ハント)。シングルマザーで病弱の息子を育てながら、たくましく健気に生きている。ある日、サイモンが強盗にあって負傷する。そこからメルヴィン、キャロル、サイモン、それぞれの人生が音を立てて動き出す。

『恋愛小説家』レビュー

『恋愛小説家』個人の評価
『恋愛小説家』個人の評価

近寄り難いけど、いつのまにか愛すべき人物に思えてくる主人公

実に上質で噛みごたえのあるヒューマンドラマでした。
全体としては淡麗なラブストーリーのようですが、ひとつひとつのエピソードが積み上げられて、全体としては上質な濃厚さに彩られています。

ジャック・ニコルソン演じる恋愛小説家メルヴィンはまともとは言い難い潔癖症であり、他者に不寛容。その異常な毒舌は、SNS全盛の今の世の中では、大炎上必至のレベルです。善良な人が『恋愛小説家』をご覧になったら、まず間違いなく眉をひそめるのは間違いありません。

ところが物語が進行してゆくうちに、いつのまにかメルヴィンが愛すべき人物に思えてくるのだから不思議です。近寄り難いけど、遠巻きに応援してしまう。

人物の複雑さが物語に厚みを与えている

物語が進行するにつれて観客は理解します。メルヴィンの意地悪な性格の裏には、ピュアで親切な心があることを。ヒロイン・キャロルがメルヴィンとのやりとりを通して、彼の美質を引き出しているようです。ジャック・ニコルソンの怪演だからこそ、ここまで複雑な人物が造形できたのではないでしょうか。

ヘレン・ハント演じるキャロルもまた単純な性格ではありません。からだの弱い息子を育てながら気丈に生きているものの、女性の可憐さや脆さも抱えている。

『恋愛小説家』が白眉なのは、メルヴィンとキャロルそれぞれのアンビバレントな感情を丁寧にすくいあげて、物語に厚みを与え、芳醇な人間ドラマに仕上げているところ。登場人物が少なく筋はシンプルで明快なのに、ドラマに懐を深さと含蓄を感じさせるのは、主役のふたりの芸達者な演技によるところが大きいのです。

上映時間138分といってもそれほど長く感じられません。エンドロールが流れる頃には、エスプリたっぷりな格調高い芝居を堪能したあとのような心地よい安らぎが得られるでしょう。

『恋愛小説家』のキャストについて

メルヴィン・・・ジャック・ニコルソン

名優の誉れ高いこの人の円熟の芸をたっぷり味わえます。いつもの狂気をはらんだ怪演とはまた一味ちがう役柄ですが、これもこれでジャック・ニコルソンだよなと納得できる。この人は、抜きん出た個性が芸域を狭めるタイプの役者だと思いますが、その個性が許容する役柄なら、並ぶ者のいない高みにまで達する人でしょう。

『恋愛小説家』のメルヴィンを丁寧に観察すると、役をつくりこんでいるようで、あえて手つかずの解釈の余地を残しているようにも見えます。メルヴィンという人物を完璧に演じきってしまうと、もしかしたら『恋愛小説家』は冷ややかな完成美しかもたらさなかったのではないかと。そうなると芸術作品としては立派でも、映画というコンテンツの出来栄えとしては不十分だったかもしれません。

ジャック・ニコルソンは、どこまでも芝居の自然な流れに乗るために、あそびを大切にしながらも愛すべき奇人を演じているように感じます。狷介だけど丸みのある狂気をはらませた演技が、『恋愛小説家』に豊かな色彩とふくよかさを与えているようです。

キャロル・・・ヘレン・ハント

きりっと端正な演技をする女優だなあと感心してしまいました。女性が力強く生きているうえで必要とされる自尊心と可憐さを、才に走りすぎることなく闊達に表現しています。

キャロルは健全で美しい心根の持ち主ですが、感情の起伏が豊かで、次に何をおっぱじめるのかわからない危うさも持っている。魅力的な女性です。演技が大げさになりがちな役柄ですが、ヘレン・ハントはうまく抑制をきかせています。

鼻っ柱が強い女性の心の機微を、言語と非言語の双方で、見事に表現しているところに妥協なき女優魂を感じました。

『恋愛小説家』作品情報

監督ジェームズ・L・ブルックス
脚本マーク・アンドラス/ジェームズ・L・ブルックス
撮影ジョン・ベイリー
音楽ハンス・ジマー
出演・メルヴィン・・・ジャック・ニコルソン
・ キャロル・・・ヘレン・ハント
・サイモン・・・グレッグ・キニア
上映時間138分
ジャンル恋愛
まめやかコラム

【コラム】人は、変らないまま、変われる

「人は変らないまま、変われる」━━ これはどういう意味か?

人間嫌いなメルヴィンは、キャロルとサイモン、犬のバーデルとの交流を通して、かたく閉ざされた ” 心の扉 ” を開きました。といってもメルヴィンの人間嫌いや奇行が治ったわけではありません。大枠は変らないけれど、例外事項が増えていき、隠れていた美質や強みが顕現するというかたちで、人は変われるのです。たとえ自分に美質や強みを引き出す力がなくても、人が見つけてくれたり、人が引き出してくれることもあります。

だからこそ、積極的に人間に関わっていくことが大切なんですね。

「たしかに若い人なら、人にもまれて美質なり強みなりが表面化するかもしれないけど、年齢を重ねると難しいのでは?」と考える向きもあるでしょう。ですが、小さな枠組みで自分で自分を決めつけないかぎり、年齢を重ねても自分の中に眠っていた手つかずの資質を発見する人は少なくありません。生きているかぎり探求にゴールはありませんが、その探求を手助けしてくれるのが他者なのです。そして自分もまた、他人の探求を手助けする存在なんですね。

「自分なんて変わりようがない」と諦めている人にこそ、『恋愛小説家』を見ていただきたいです。たしかにどこまでいっても自分は変わらないけれども、自分がもともと持っている美質や強みを引き出して輝かせることは不可能ではないと勇気づけられるでしょう。あるいは健全な相互依存をベースにした、新しい人間関係を求めたくなるかもしれませんね。

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