『死者の身代金』刑事コロンボ定額見放題配信情報と感想

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2022年10月2日2024年3月13日

『死者の身代金』（1971年）

主演：ピーター・フォーク／リー・グラント
『死者の身代金』は、前作の1話完結テレビドラマ『殺人処方箋』が大好評のために、TVシリーズ化前のパイロット版として作られた刑事コロンボ第2作。前作はどこか良質な芝居の雰囲気を漂わせていたのに対して、今作は映画的な趣向が凝らされている。敏腕なる女流弁護士と刑事コロンボの対決は見もの。この記事では『死者の身代金』の感想レビューや見どころ、定額見放題で刑事コロンボを楽しめる配信サービスをご紹介。

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『死者の身代金』刑事コロンボ第2話のあらすじ

レスリー・ウィリアムスは男性顔負けの腕利きの女性弁護士。
妻を亡くした弁護士ポールと結婚したのは、自らの野心のためである。

ある夜、レスリーは自宅で夫を射殺。
死体を海に捨てると、自分で用意した脅迫状をポストに投函。
つまり、あらかじめ夫を殺しておいて、誘拐事件に仕立て上げるという犯罪計画である。

生前のポールが録音したテープを編集し、指定した時刻に自動で電話をかける装置をセッティングするレスリー。
FBIたちのいる前で、すでに死者である夫から、「身代金受け渡し」の指示を受けるという寸法だ。
FBIの捜査チームはなんら不自然な点を感じることはなく、誘拐犯逮捕のために本格始動する。

だが、ひとりだけ、レスリーの挙動に疑問をもつ人物がいた。
市警本部からの連絡役としてウィリアムス邸に居合わせたコロンボ刑事である。
誘拐されたポールとの電話のやりとりで、レスリーが夫の安否を問う様子がまるでないことに不自然さを禁じ得ないのだった。

やがて「犯人」の指示通り、小型機の操縦ができるレスリーは、上空から身代金の入ったバッグを投下。
搭乗前、レスリーはあらかじめバッグをすり替えておいたため、地上に落ちたバッグは空だった。
FBIがバッグを発見しても、すでに犯人が中身の金だけ持ち去って逃走したと考えるのが自然だろう。
それを見越してのトリックである。

コロンボはますますレスリーを怪しいとにらむが、レスリーの犯罪は完璧であり、証拠らしいものは何も出てこない。
そんななかコロンボは、ポールと先妻との娘・マーガレットが継母レスリーに不信感を抱いていることを知る……

作品情報

監督	リチャード・アーヴィング
脚本・制作	ディーン・ハーグローヴ
音楽	ビリー・ゴールデンバーグ
出演	・レスリー・・・リー・グラント・コロンボ・・・ピーター・フォーク・マーガレット・・・パトリシア・マティック・カールソン主任・・・ハロルド・グールド・バート・・・ティモシー・ケリー
上映時間	95分
ジャンル	サスペンス／ミステリ／海外ドラマ

日本語吹き替え版スタッフ

声優	・リー・グラント（山東昭子）・ピーター・フォーク（小池朝雄）・パトリシア・マティック（上田みゆき）・ハロルド・グールド（北村弘一）・ティモシー・ケリー（鈴木泰明）
演出	左近允洋
翻訳	額田やえ子
旧録音版翻訳	飯島永昭
追加演出	伊達康将
追加翻訳	岸田恵子

『死者の身代金』の感想・レビュー

テレビシリーズ化する前の、文句のつけようのないパイロット作品

本作は刑事コロンボ第2作であり、TVシリーズする前のパイロット（先行版）作品。
前作『殺人処方箋』は単発ドラマとしてこじんまりとした佳品でしたが、『死者の身代金』は偽装誘拐事件をスケールの大きい犯罪をテーマにしているだけあって映画的な作品に仕上がっています。

前作から3年のスパンがあるせいか、コロンボがほどよいくたびれ方をしていて、このパイロット版でキャラクターやスタイルがかっちり固まったという印象。
パイロット版としては文句のつけようがない質といえましょう。

コロンボ役のピーター・フォークは、当時すでに売れっ子だったため、TVシリーズ化には難色を示しました。
しかしこの類まれな倒叙ミステリドラマシリーズに出演したことで、コロンボのアイコンとして全世界に親しまれるのですから、ピーター・フォークの選択は正しかったのでしょう。

トリックを仕掛けた知能犯への「逆トリック」に唸る

犯人のレスリーは敏腕女流弁護士だけあって、聡明で頭がキレるだけでなく、目的のためならどんな手段も辞さない冷酷な性格の持ち主。
そんなレスリーの性格を利用した、コロンボの逆トリックがひときわ鮮やかで、思わず唸ってしまいました。

プロットの巧さ、伏線の張り方の見事さもさることながら、人間への洞察がきらりと光るヒューマンドラマとしても秀逸。
レスリーの義娘マーガレットの存在もストーリーをスリリングにする効果を生んでいます。

雰囲気ある音楽は、『死者の身代金』のハラハラドキドキのストーリーにぴったり。
見事な変奏をきかせていて、ビリー・ゴールデンバーグのメインテーマは物語に格調とふくらみを与えています。

妙味ある「親戚芸」

第1作からカミさんや親戚話を出していたコロンボですが、今作でも魅力的な親戚を引き合いに出して、視聴者の微笑を誘います。

『死者の身代金』では、いとこのラルフがとりわけ印象的でした。
コロンボのいとこのラルフは、話しっぷり、素早い頭の回転、男前と三拍子揃った伊達男。
ラルフを見るたびに、コロンボは妬けるそうです。「殺したくなるくらいに」という、刑事にしてはずいぶん不穏当な感慨をレスリーにもらしています。

あるいは親戚の存在は、老獪な刑事の「口からでまかせ」かもしれませんが、真偽はどうあれ飄々としたコロンボの語り口がクセになる。
なんとも妙味ある「親戚芸」といってもいいでしょう。

『死者の身代金』のキャストについて

コロンボ（ピーター・フォーク）

一見パッとしない風貌だけど、いざ事件が起これば冴えわたる推理力と洞察力を発揮し、創造的なひらめきとユーモアに富んだ捜査で犯人に肉薄していくコロンボのスタイルは、ピーター・フォークにしか作れないものでしょう。

二枚目ハードボイルドでは、ありふれていてさしたる魅力はありません。
憎めなくて親しみやすい、キレ者刑事を創造するには、俳優に特別な資質が求められるのではないでしょうか。

ピーター・フォークはインタビューで「コロンボほど賢くないよ」と答えています。
ですが、俳優としての明晰な頭脳と健全な野心、独創性がなければ、シリーズ全69作を続けることはできないでしょう。

前作では、精悍なコロンボを楽しめましたが、あくまで単発ドラマでした。
ピーター・フォークにとって刑事コロンボは長い役者キャリアにおける、ひとつの「通り道」にすぎなかったのかもしれません。

しかし、『死者の身代金』では、コロンボという役柄に対する腰の据え方がまるで違います。
全作品に通じるコロンボの、ユニークさ、タフさ、人間臭さ、大胆さ、ジェントルなふるまい、厳しさ、やさしさがそこはかとなく表現されていて、ピーター・フォークの覚悟のほどがうかがえるのです。

レスリー（リー・グラント）

野心家で非情な女性弁護士に似つかわしいクールは風貌は、今見ても古めかしい印象がありません。
美貌にも演技力にも抜きん出た女優です。

演技のはしばしに、この人の役者としての利発さや高い教養が底光りを放っています。
当時としては最先端だったであろう臭みのある演出も、この人の役者としての正統性を貶めることはありません。

リー・グラントは『死者の身代金』が放映された1971年に、テレビドラマ『ネオン輝く日々』でエミー賞を受賞。
1975年には映画『シャンプー』でアカデミー賞助演女優賞を獲得。
ちなみに、『シャンプー』はAmazon Prime Videoで視聴できますが、『ネオン輝く日々』はどの動画配信サービスも配信していないようです。

レスリー以外の役柄で、この人の表情がどのように変化するのか見てみたいです。