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映画『スティング』動画視聴※この騙され方ならダマサれて本望……

『スティング』(1973年)

主演:ポール ニューマン/ロバート レッドフォード

第46回(1974年)アカデミー賞(作品賞・監督賞・脚本賞・編集賞・美術賞・衣装デザイン賞・歌曲/編曲賞)獲得。『明日に向かって撃て!』の監督ジョージ・ロイ・ヒルが、ニューマン&レッドフォードをふたたび起用して制作したエンタメ犯罪ムービー。ニューマン率いる詐欺グループが、ギャングのボスをひっかけて50万ドルをせしめるまでをユーモラスに描く。

『スティング』
出典:Amazon.com

この映画、こんなあなたにおすすめです!

  • 華麗に鮮やかに騙されたい方
  • 深刻ではない明るいクライムサスペンスがお好みの方
  • クラシックなアメリカ映画に興味のある方
  • ビジネスや商売で、お客の心をつかむヒントを探している方

『スティング』作品情報

監督 ジョージ・ロイ・ヒル
脚本 デビッド・S・ウォード
撮影 ロバート・サーティース
音楽 マービン・ハムリッシュ
出演 ・ゴンドーフ・・・ポール・ニューマン
・フッカー・・・ロバート・レッドフォード
・ロネガン・・・ロバート・ショウ
・ビリー・・・アイリーン・ブレナン
・スナイダー・・・チャールズ・ダーニング
・ルーサー・・・ロバート・アール・ジョーンズ
上映時間 129分
ジャンル サスペンスコメディ

ストーリー

舞台は1930年代シカゴの下町。詐欺師フッカー(ロバート・レッドフォード)は、一人の男から金を騙し取るが、その男がギャングの手下と知って慄然とする。ギャング組織のボス、ロネガン(ロバート・ショウ)は報復のため、フッカーの師匠であるルーサー(ロバート・アール・ジョーン)を殺害。

フッカーは、ルーサーの友人である手練れの詐欺師ゴンドーフ(ポール・ニューマン)のもとに駆けつけ相談。ふたりはロネガンから金を騙し取る計画を練る。昔の仲間に協力を呼びかけたゴンドーフは、競馬のノミ屋を開き、ロネガンに巧妙な罠を仕掛けるが……

『スティング』感想

まめやか流筆のすさび

鮮やかにだまされる快感

『スティング』を見て感じた印象を筆のすさびで表現

洗練されたクラシックなスタイル

1930年代のシカゴの雰囲気。登場人物たちの小洒落た衣装。そしてラグタイムをアレンジした『ジ・エンターテイナー』の軽快な気品のある音楽。何から何まで心地よいクラシックなスタイルで統一されています。映画そのものがまるで洒落た工芸品のようです。クラシックといっても『スティング』の映像世界は洗練度が高く、2時間たっぷり堪能できました。

洗練されているのは映像だけではありません。起伏に富んだストーリーは、いささか多弁だけれどエスプリが潤沢に含まれていて、見る者を気持ちよく酔わせてくれる。最後のどんでん返しの、「してやられた感」はなんとも痛快で、一杯食わされたことに感謝したくなるくらいです。

作り手と観客の心地よい「共犯関係」が成立しているかと思いきや…

『スティング』の主人公たちに強く感情移入してしまうところにあります。映画を見る者の立場としては、ゴンドーフとフッカーがギャングのボスに罠にかける大胆な計画に立ち会うわけです。ちょっとした「共犯関係」といってもいいかもしれません。

「共犯関係」ですから、計画を遂行するにあたっての大事な情報は、見る者にも漏れなく知らされると思いきや、さにあらず。もっとも大事なことだけは知らされないのです。最後の最後まで。

主人公たちとの「共犯関係」は見事に裏切られてしまいますが、これといって悪い気持ちにはなりません。むしろ爽快感がある。・・・まったく「人が悪い」映画です。『スティング』の突出した魅力は、まさにその「人が悪い」ところにあるのではないでしょうか。

『スティング』のキャストについて

ゴンドーフ(ポール・ニューマン)

世故に長けた知的で粋な天才詐欺師を、ポール・ニューマンの持ち味を出し惜しみすることなく演じています。隙きのないカッコ良さで、一世一代のペテンを仕掛けるのだから参ってしまう。

このゴンドーフという詐欺師は、とにかく人の懐に入り込むのがうまい。とぼけた感じで相手に近づいて、ゆっくり着実に警戒心をほどき、ばらけさせて、すっかり信用させてから、一気に出し抜く。まるで新春かくし芸のテーブルクロス引きみたいな鮮やかな手さばきです。

ゴンドーフほどの老練な詐欺師になると、気の毒な被害者に「騙されたことすら気づかせない」のが、腕の見せどころになるのでしょう。

フッカー(ロバート・レッドフォード)

ロネガンに一杯食わせるために、ゴンドーフに協力を仰ぐ詐欺師を軽妙な語り口で演じています。ゴンドーフとのコンビネーションはピッタリ。ふたりのツーショットは「絵」になります。

ロバート・レッドフォードは終始こなれた演技で、控えめに叙情を差し込みながら、物語が深刻にならないように怠りなく目配りをきかせているかのよう。その甲斐あって、『スティング』は犯罪映画でありながら、テンポのよい軽快な作品に仕上がっています。

ポール・ニューマンを引き立てるロバート・レッドフォードの心遣いがひしひしと感じられて、本当に素敵なコンビだなあと、見ていてとてもいい心持ちになりました。

まめやかコラム

ビジネスはエンターテイメント━━ 鮮やかに騙されたい、それもまた人間の本性

華麗に騙される快感━━ これが『スティング』の魅力です。
僕たちは、まんまと騙されるわけですが、ポール・ニューマンやロバート・レッドフォードに怒り心頭に発する人なんていないでしょう。なぜなら、騙されることで愉快な気分を味わっているわけですから。欺かれて価値を受け取っているのです。これはほかの娯楽にも言えることですよね。テーマパークや落語やマジックや推理小説にも当てはまる。

そこで思い出すのが「近代奇術の父」といわれるロベール・ウーダンの名言。

「人はただ騙されたいのではなく、紳士に騙されたいと思っている」

怪しい人間ではなく、「素敵な相手から華麗に騙されたい」という人間の本性を的確に見抜いた言葉です。

もちろん人に損害を与えたり、傷つけたりする「騙り(かたり)」は許されるものではありません。いっぽうで人に喜びをもたらし、人に価値を提供する「騙り」もあるのではないでしょうか。

あるいはこんなことを書くとお叱りを受けるかもしれませんが、ビジネスや商売も、お客様に対して有効に価値を提供するための「騙り」と言えなくもない。「騙り」がなければ、利潤を生み出すことが出来ず、経営や商売は立ち行かなくなりますよね。

「騙り(かたり)」という言葉の印象が悪ければ、こう申し上げてもいいでしょう。
「価多り(かたり)」と。

お客様により多くの価値を受け取ってもらうために、いかに喜ばしいサプライズをしていくか、いかに嬉しい裏切りをしていくか━━ このように考えるとビジネスにはエンターテイメントの側面も多分にあると思いませんか?

お客さんを良い意味で華麗に裏切る「価多り(かたり)」をするにはどうすればいいか?という問いを立てることが、ブレイクスルーの端緒を開くカギになると僕は考えています。

ちゃお!!

それではまた